フィラリア症予防
フィラリアってなに?
犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)ともいい、犬を宿り主としたそうめんのような白くて細長い寄生虫のことです。フィラリア症にかかっている犬を吸血した蚊がほかの犬を吸血するときに、だ液と一緒に犬のからだの中にフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を入れてしまうことで感染が成立します。ミクロフィラリアは成長すると最終的に、肺動脈といわれる心臓と肺のあいだにある血管の中を主な寄生部位として、次々に繁殖し、肺や心臓の病変や血栓症などを引き起こします。

どうやって予防すればいいの?
地域によっても変わりますが、関東地方では4~5月から12月くらいまでの間、毎月1回、フィラリアの予防薬を飲ませることでフィラリア症になるのを予防することができます。毎春、フィラリア予防のシーズン開始時には、少量の血液を採取し、フィラリアの検査をおこない、陰性(フィラリアの反応が出なかった)であれば投薬を開始することができます。
注射薬によるフィラリア予防の方法もありますが、特異体質によりまれに重篤な副作用を示すことがあるため、当院では飲み薬のみでの予防をおこなっていますので、ご了承ください。

どうして毎年フィラリアの検査が必要なの?
フィラリアは、出口のない血管の中に寄生するため、フィラリアの成虫が寄生していることを知らずにお薬を与えると、死滅した虫体が肺動脈内につまって血栓をつくり、ショック状態などの非常に危険な状態に陥ることがあります。
・たまたま1回分(1カ月分)お薬をのませ忘れてしまった
・毎月ちゃんとお薬をのませていたつもりが、
実は飼い主さんの見ていないところでお薬を吐き出していた
・たまたま投薬日の体調が悪く、のませたお薬がうまく吸収できていなかった

などの様々な要因でフィラリアの幼虫が生き残ってしまい、フィラリアに感染してしまう可能性があり得るため、4月下旬~5月上旬のフィラリア予防開始時は採血を してフィラリア検査をおこないます。
フィラリアのお薬は
1ヵ月間ずっと効いているわけではありません
フィラリアのお薬はいわゆる駆虫薬です。お薬を飲ませる前の1カ月のあいだに体内に入った可能性のあるフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を、1カ月ごとにまとめて駆虫してリセットしましょう、というお薬です。従って、シーズン最後(12月)の投薬が実はとても大事で、11月中にもしもフィラリアに感染した蚊に刺されていた場合、12月にしっかりお薬を飲ませずにシーズンを終了してしまうと、次の春のシーズン開始時にはフィラリア検査が陽性となってしまう(フィラリアにかかってしまう)可能性があります。

猫のフィラリア症
(HARD:犬糸状虫随伴呼吸器疾患)
猫にもフィラリアが感染してしまうことがあります。犬のフィラリア症では肺や心臓に障害を及ぼし、いわゆる心臓病を起こすのに対し、猫のフィラリア症は肺動脈、気管支、肺に炎症性の障害が発生する「呼吸器疾患」です。
フィラリアに感染した猫は、突然死を起こしたり、慢性的な呼吸器疾患を患ったりします。

フィラリアの主な宿り主は犬であるため、猫の体内に入っても通常多くのフィラリアが成虫になるまでに死滅しますが、少数(1~3匹)生き残ってしまうことがあります。そのため、成虫はオスかメスのどちらかのみが少数寄生していることがほとんどで、ミクロフィラリア(フィラリアの幼虫)を産まない(あるいは産んでも数が少ないため検査に引っかからない)ため、フィラリア予防を始める際に犬のようにフィラリア検査をする必要がありません。
感染しているフィラリアが少ないために、検査で陽性が出れば診断がつくこともありますが、多くの場合検査は陰性で、陰性でも感染を除外することができません。つまり、猫のフィラリア症は診断がとても難しいのです。
したがって最も大事なことは、「猫もフィラリア予防をする」ということです。
1カ月に1回、首のうしろにお薬をたらすだけでノミ・回虫・耳ヒゼンダニと一緒に、簡単にフィラリアも予防できますので、ご希望の場合はご相談ください。