千葉‧⾹取市佐原の動物病院「オリーブペットクリニック」2014年12⽉開院!

オリーブペットクリニック

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かつて不治の病であったFIPが現在の治療可能な状況に至るまでには、研究に取り組んでくださった先生方の努力と熱意の結晶、そして新型コロナウイルス感染症の流行をはじめとした様々な背景が関わっています。


FIP治療薬の開発における背景

アメリカのギリアド・サイエンシズ社というバイオ医薬品会社は、もともとGS-5734という化学物質(レムデシビル)をエボラ出血熱というエボラウイルスによって引き起こされる感染症の治療用に開発していましたが、2019年に新型コロナウイルス感染症が流行しはじめ、このGS-5734(レムデシビル)がコロナウイルスの増殖も抑制することがわかり、新型コロナウイルス感染症の治療薬として世界で初めて承認されました。そして、この薬剤は細胞内で変化し、GS-441524という物質に変わります。

2019年に、FIPの研究の第一人者であるカリフォルニア大学のPedersen先生がこのGS-441524がFIPの治療に極めて有効であるという報告をしてから、かつて不治の病であったFIPは、その治療研究が革新的に進みました。

Efficacy and safety of the nucleoside analog GS-441524 for treatment of cats with naturally occurring feline infectious peritonitis

(Pedersen NC, Perron M, Bannasch M, Jounrnal of Feline Medicine and Surgery, 2019)

GS-441524はアメリカのギリアド・サイエンシズ社がもともと特許を保有しており、他の製薬企業が製造・販売できないなか、FIPの治療におけるGS-441524の有効性と需要の多さに着眼した中国からGS-441524のコピー製品がサプリメントとして高値で多数ブラックマーケットで流通しました。それらの製品によって多くのFIPの猫ちゃんが助かったのも事実ですが、コピー製品はその製品中に含まれるGS-441524の含有量など品質的に欠陥や不明な点が多く、これを使用することには様々な問題がありました。

一方、ギリアド・サイエンシズ社が開発し、新型コロナウイルス感染症の治療にも使われているレムデシビル(GS-5734)という薬剤が細胞内でGS-441524に代謝・変化することを受け、イギリスのBOVA社が、まだギリアド・サイエンシズ社によって特許が取得されていない正規レムデシビルを猫のFIP治療に使えるようにイギリス内で認可を取り、さらにレムデシビルからGS-441524を製造し、2021年11月より動物用医薬品として経口GS-441524製剤(錠剤)を販売するようになりました。これにより、正規医薬品を用いたFIPの治療がようやく行えるようになりました。

しかし、レムデシビルと経口GS-441524製剤は薬価がとても高く、経口GS-441524製剤は入手方法も簡単ではなく、いつくるかわからないFIPの症例に備えて高額な薬剤を常に在庫しておくことは動物病院にとってもリスクがあり、販売から数年経つ今も、まだまだすべての動物病院に置いているお薬ではありません。

また、レムデシビルとGS-441524に抵抗性のFIP症例が現れるようになり、別の抗コロナウイルス薬である、アメリカのメルク社が開発したモルヌピラビル(商品名;ラゲブリオ)の使用が検討され、日本でもおそらく最もモルヌピラビルの使用経験が多い佐瀬先生(ユーミー動物病院)の論文発表※1※2をはじめとして、モルヌピラビルの有効性が評価されてきています。

(※1 Sase O. Molnupiravir treatment of 18 cats with feline infectious peritonitis: A case series

(※2 Sase O, Iwami T, Sasaki T, Sano T. GS-441524 and molnupiravir are similarly effective for the treatment of cats with feline infectious peritonitis

当院では、BOVA社のレムデシビル注射薬および経口GS-441524製剤(錠剤)、およびそれらの薬剤より安価であるモルヌピラビルを用いたFIPの治療を行っています。

わざわざあえてこのように、これらの薬剤を使って治療を行っていることをお知らせするのは、どこの動物病院に行けばこれらの抗ウイルス薬を使ったFIPの治療ができるのかお困りの近辺の飼い主様のためです。

FIPの猫ちゃんの治療でお困りの飼い主様はご相談ください。


抗ウイルス薬

経口GS-441524製剤(BOVA社製)

BOVA社製の動物用医薬品です。ツナフレーバーかつ錠剤になっており、比較的投薬しやすくなっています。

2019年のPedersen先生の報告をはじめとして、最も論文報告の多い薬剤になります。1日1回~2回(臨床症状による)、84日間経口投与するプロトコールが基本ですが、

2024年にAnna-M.Zuzzi-Krebitzらによって報告された論文では、wetタイプのFIPにおいては42日間の短期投与でも84日間投与の場合と治療有効性が同等であり、短期投与で済む分、治療コストの削減と耐性ウイルスの発生予防につながるとのことで注目されています。(wetタイプのみ適応)

Short treatment of 42 days with oral GS-441524 results in equal efficacy as the recommended 84-day treatment in cats suffering from feline infectious peritonitis with effusion-A prospective randomized controlled study.

(Zuzzi-Krebitz A-M,  Viruses 2024)

レムデシビル注射液(BOVA社製)

体内でGS-441524に変化し、抗ウイルス作用を発現します。

一般状態が悪く緊急性を要する場合、迅速な初期治療として経口投与よりも確実かつ早期に血中濃度が上がるレムデシビルの静脈内投与が有効です。

注射薬のため入院治療が必須で、1週間以内には退院できることが多いですが、治療費はかなり高額になります。経口投与が可能になった時点で、経口GS-441524製剤の投与に切り替えます。

モルヌピラビル(商品名;ラゲブリオ)

レムデシビルや経口GS-441524製剤に比べると安価ですが、一般的な内科疾患に比べるとまだまだ高額な治療費がかかります。また、当院においては確実な用量を投与するためカプセル処方にしていますので、GS-441524と比べるとやや投薬しにくいのは少々難点です。これを1日2回84日間続けなくてはいけません。

初期治療による状態改善がGS-441524と比べるとモルヌピラビルの方が若干遅いのと、GS-441524よりも臨床データがまだ少ないですが、ユーミー動物病院の佐瀬先生の論文報告(上記※2)により、モルヌピラビルを正しく投与した場合、モルヌピラビルとGS-441524はFIPの猫において同等の治療効果と安全性があることも報告されています。

モルヌピラビルは中~重度のFIP症例、特に食欲廃絶や消化管機能障害などを認める場合は、適応にならない場合もありますので、必ずしもこのお薬を選べるとは限りません。

また、モルヌピラビルはレムデシビル同様、人の医薬品であり、動物用医薬品ではありません。催奇形性を有するため、妊娠中や授乳中の飼い主様とそのご家族は使用することができません。


現在、猫腸コロナウイルスを保有している猫ちゃんにも朗報

子猫の時から便がゆるく、糞便検査をしても寄生虫が検出されず、PCR検査(※当院では、アイデックス社の下痢パネル検査)を行った結果、慢性下痢の原因が猫腸コロナウイルスであるケースは比較的よく見かけます。

2018年以前のFIPが不治の病であった時代は、PCR検査でこの猫腸コロナウイルスが陽性だった場合、ストレスなどの様々な要因により将来的にFIPを発症する可能性がまれにあり、もし万が一発症してしまったらかなり厳しいお話をせざるを得ない状況でした。

しかし現在はもしFIPを発症してしまったとしても上記の抗ウイルス薬の登場により、治療費は高いですし再発率も0%ではありませんが治すことができるようになりました。皮肉にもその革命的な医療の進歩に一役買ってくれたのは新型コロナウイルス感染症の流行でした。

現在もこの猫腸コロナウイルスにより便がゆるい猫ちゃんのいる飼い主様は、FIP発症を必要以上に恐れることなく、たくさん愛情を注いで可愛がってあげてください。


FIPの治療における注意点

いくら上記のような抗ウイルス薬を用いても救命率は100%ではありません。

最も重要なことは、早期診断・早期治療開始です。病期(ステージ)が進んでいると治癒確率も悪くなり、手遅れの場合、抗ウイルス薬を投与しても亡くなってしまうことはあります。治療開始のたった一日の遅れが命取りになることも少なくありません。

また、抗ウイルス薬の飲ませ忘れや失敗は、治癒率の低下や再発率の増加につながります。必ず決められた投薬回数と時間を遵守するようにしてください。

※また、お薬の在庫の問題がありますので、ご希望の方はいきなりのご来院ではなく、できるだけ事前にお電話ください。

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