千葉‧⾹取市佐原の動物病院「オリーブペットクリニック」2014年12⽉開院!

オリーブペットクリニック

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猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

概要

主に感染猫の唾液を介して猫同士で伝播する感染症で、ウイルスに感染後、ウイルスを体内から排除できずに持続性ウイルス血症となった感染猫は、リンパ腫や白血病などをはじめとした様々な疾患を発症することがあり、その多くが致死的な経過をたどる予後不良の感染症です。


感染経路

ウイルスは感染猫の唾液、糞便、尿、鼻汁中に存在するウイルスによって伝播します。特に猫同士のケンカによる咬傷や舐め合いによって感染することがほとんどで、主に唾液を介して感染します。経乳感染・胎盤感染、食事や食器の共有による感染もあり得ます。また、生後FeLV抗原陽性の母猫が子猫を舐めることによっても高率にウイルスが伝播します。

 


感染タイプ

感染タイプは大きく3つに分けられ、それにより予後が大きく異なりますが、どのタイプで感染するかはそれぞれの猫の免疫能によると考えられます。

ざっくりとした傾向としては、子猫のうちに感染した場合は持続感染となり予後不良、成猫になってから感染した場合は一過性感染、潜伏感染となり予後良好の傾向があります。

①持続性ウイルス血症(持続感染猫)

生後4カ月以内に感染すると、高率に持続性ウイルス血症を起こし、持続感染猫となります。成猫でも様々な要因によって免疫能が低下している時に感染した場合、持続感染が成立することもあります。

持続性ウイルス血症となった感染猫は、FeLVに関連した様々な疾患を発症することがあります。

ある報告では6週齢以下の子猫で70~100%、8~12週齢では30~50%、1歳以上では10~20%の猫が持続感染猫になるとの報告があります。

一過性感染(体内からのウイルス排除)

 感染初期に有効な免疫応答が体内ではたらいた場合には、ウイルスを体内から完全に排除することができます。その結果、ウイルス検査では陰転し、FeLV関連の疾患の発症は認められず、新たなFeLVの暴露に対しても抵抗性(感染しにくくなる)を獲得します。

一過性のウイルス血症は1~16週間続き、16週間以上ウイルス血症がみられる猫は持続感染と考えられます。

③潜伏感染

持続感染成立の場合と同様に骨髄までの感染が成立した後、ある程度の免疫応答によってウイルスが排除され、検査は陰転しますが、ウイルスは骨髄やリンパ節の染色体にプロウイルスとして組み込まれ潜伏感染しています。

その後、潜伏感染のままでいることもありますが、免疫応答が優勢になった場合にはウイルスを完全に排除することもあり、一方、出産などのストレスやストロイド剤の投与などによってFeLVの増殖が活発化し、持続感染となってしまうこともあります。

 


症状

FeLVが感染した初期には、発熱や白血球減少症などの骨髄抑制が認められることがあります。この症状は1週間程度とされていますが、輸液療法や抗菌薬投与といった対症療法のみで軽快することも多くウイルス感染も成立しないこともあります。

しかしその後、持続性ウイルス血症となってしまった場合、どのような病気や疾患を引き起こすかを予測することはできません。しかし、最も認められる症状は造血器系腫瘍、免疫抑制、貧血です。また、持続性ウイルス血症であっても発症せずに無症候キャリアのままでいる場合もあります。

造血器系腫瘍

FeLVによって引き起こされる造血器系腫瘍のうち、最も代表的なものがリンパ腫です。

前縦隔型リンパ腫はリンパ腫のうち最も頻度が高く、胸腔内で心臓の前部(頭側)のリンパ節が腫瘍化して巨大になり、心臓や肺を重度に圧迫し、呼吸困難や胸水貯留などを引き起こします。生後間もない子猫のうちに感染して持続性ウイルス血症になった猫は1~2歳前後で発症することも少なくありません。

免疫抑制

免疫抑制の状態になると、他の病原体に感染する可能性があります。慢性口内炎慢性鼻炎を起こすこともあります。

貧血

FeLVによる貧血は、ほとんどの場合がウイルスによる骨髄抑制効果によって引き起こされる非再生性貧血(再生不良性貧血)で、治療への反応は乏しく予後不良です。まれ(約10%)に治療に反応を示す再生性の貧血が認められることもあります。

FeLVに関連した貧血として、猫ヘモプラズマ症という感染性の再生性貧血や、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)を起こすこともあります。

 


検査

FeLVの診断には血液中のFeLV抗原を検出する院内検査キットが普及しています。少量の血液を採血し、検査キットにかけることで10分ほどで結果が出ます。

*抗原検査の注意点*

①咬傷などによる感染初期(4~6週間)ではウイルス抗原が検出されないため、感染猫に咬まれてすぐに検査しても偽陰性となってしまいますので、感染の可能性がある猫ではできれば受傷後2カ月程度(FIVの同時感染の可能性もあるため)の期間をあけて検査を行う必要があります。

FeLV陽性の判定が出た場合、予後の予測のためにも16週間(約4カ月)後に再検査を行い、持続性ウイルス血症なのかどうかを確認することが望まれます。

 


治療

①抗ウイルス療法

インターフェロンω(インターキャット)の投与によって症状の改善が認められるとの報告があるが、効果は確実とは言えません。

②対症療法

FeLVによる何らかの疾患を伴う場合は、それぞれの疾患に対しての対症療法を行います。

例えば代表的なものとして、前縦隔型リンパ腫を呈した感染猫には多剤併用による抗癌剤治療を考慮します。抗癌剤の投与により腫瘍が縮小し、呼吸状態がかなり改善することも少なくありませんが、効果は永久的ではなく、いつか必ず再発はします。当院では半年間の抗癌剤治療を行い、その後数年再発しなかった例もありますが、数カ月後にすぐに再発した例もあり、再発までの期間は個体差によります。

慢性口内炎を示す感染猫には、抗炎症作用や食欲増進を期待してステロイドの投与や、二次感染防止として抗菌薬の投与などを検討します。

 


FeLV感染猫の管理

・多頭飼育をしている場合、できれば全頭のウイルス検査を行い、陽性猫と陰性猫を別々に隔離して飼育することが好ましいです。ウイルス血症が認められた猫(陽性猫)が、陰転(再検査で陽性から陰性に変わった)した場合は、ウイルスは骨髄やリンパ節の染色体にプロウイルスとして潜伏感染して存在しています。すなわちウイルスが完全に猫体内から排除されたとは考えません。この潜伏感染している猫の血液を輸血すると、輸血された猫ではウイルス血症となります。潜伏しているウイルスは再活性することがあるため、陰転した感染猫が多頭飼育環境やストレス、何らかの疾患によってFeLVを産生するようになるかもしれません。したがって、陰転した感染猫も非感染猫と一緒に飼育すると、いつのまにか陰転猫が陽性猫となり、ウイルスを蔓延させてしまう危険性があります。

・FeLVに感染している猫では他の感染症に罹患しやすくなっているため、屋外へ出さないようにしましょう。

・感染猫は定期的に健康診断を行い、体調をチェックしましょう。

 


FeLVワクチン(5種混合ワクチンに含まれる)

FeLV陰性の猫を完全室内で飼育している場合はFeLVに感染することはありません。屋外に出ることがある場合は、ウイルス暴露を受ける可能性があるので5種混合ワクチンを検討します。ただしワクチン接種によってウイルス感染を完全に防げるわけではありません。ワクチン接種を行う場合はウイルス検査によりFeLV感染の有無を確認し、FeLV感染が認められる場合はFeLV感染防御を目的としたワクチンは接種しません。

すでにウイルス血症になっている猫にワクチンを接種しても発症を抑制したり、生存期間を延長するなどのメリットはありません。

 


消毒

ウイルスは猫の体内から離れるとすぐに失活します。石けん、消毒薬、熱、乾燥などにより容易に感染性を失います。