横隔膜ヘルニアとは、胸とおなかを仕切っている横隔膜が事故などの何らかの原因によって破れ、その結果、おなかの中にあるべき臓器が横隔膜の破れた穴をくぐって胸の中に飛び出してしまう病気のことです 😯
まれに先天性、つまり生まれつきのこともありますが、多くの場合は、交通事故などの強い力が腹部などに加わりその圧によって横隔膜が破れる、外傷性横隔膜ヘルニアが一般的です
経験的には、外に出入りする猫ちゃんに多く発生しています。
横隔膜ヘルニアを起こした場合、おなかの中の肝臓や腸などの臓器が胸の中に入ってしまい、心臓や肺を圧迫して呼吸困難を起こします。
呼吸したくても肺がふくらめないので、とってもとってもくるしい状態が24時間、毎日毎日続きます
外科手術によって、胸の中に脱出した臓器をおなかの中に戻し、横隔膜の破れた穴を縫合してふさがない限り、苦しい状態が治ることは生涯ありません。
しかし手術も呼吸管理が難しく麻酔はとてもハイリスクなため、命がけの手術となります…。
当院にご来院された横隔膜ヘルニアの症例をご紹介します。
まだ生後3カ月の子猫で、聴診をしたところ心臓の位置がおかしく呼吸困難を起こしていたので、レントゲンを撮ったところ、小腸の大部分が胸腔内に入り込んでしまっていました。
2日ほど酸素室で呼吸の安定化を図ったのち、手術を行いました。
麻酔導入後は呼吸状態がなかなか安定せず、緊迫した状態が続きましたが、上腹部を切開・開腹したところ、横隔膜の右側寄りにヘルニア孔(破れた穴)が確認できました。
小腸の大部分がヘルニア孔を通って胸の中に入り込んでしまっていました。
↓小腸を整復している様子です。(※再生の際、苦手な方はご注意ください。)
小腸を慎重に引っ張り出し、胸の中の圧迫が解除され、肺がふくらめるようになり、ようやく麻酔も安定してきました。
胸の中に入ってしまった空気を抜くためのカテーテルを設置し、ヘルニア孔を糸で縫合・閉鎖し、閉腹して終了です。
↑ヘルニア孔に糸をかけ終わり、これから順にしばっていくところ
術後、この猫ちゃんも劇的に呼吸状態が改善し、元気になって退院していきました
あんなに呼吸がつらそうだっただけに、呼吸が楽になって本当に良かった!
退院おめでとう