千葉‧⾹取市佐原の動物病院「オリーブペットクリニック」2014年12⽉開院!

オリーブペットクリニック

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動物の病気について

病気を抱えてしまったペットの飼い主様、
まだペットは元気だけどもしも何か病気をしてしまったときに備えての知識や⼼構えなどいろいろ知っておきたい飼い主様のために、動物の病気について記事をまとめていきます。

  • ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)

    概要

    まだ免疫力の十分でない子犬が発症することの多い、咳を主症状とした感染性の気管および気管支炎のことです。

     

    病原体

    イヌアデノウイルス2型、

    犬パラインフルエンザウイルス、

    犬ヘルペスウイルス、

    Bordetella bronchiseptica(気管支敗血症菌)、

    マイコプラズマ

    などの病原体の単独あるいは複合感染によって起こります。

    Bordetella bronchiseptica(気管支敗血症菌)がネコに感染することはまれで、ケンネルコフといえば、一般的には子犬が罹患する伝染性の喉頭気管炎を指します。

     

    症状

    軽度のケンネルコフでは、短くて乾いた咳が特徴的で、3~10日間の潜伏期間の後に発症します。

    気管を触診することによって咳が容易に誘発されます(コフテスト陽性)。

    また、運動、興奮、首輪の圧迫などによっても咳が出やすくなります。

    食欲・元気は通常ありますが、病原体の混合感染により子犬はより重度の呼吸器症状(痰(たん)を伴う咳、鼻汁排出など)を呈し、発熱や元気消失などの全身症状が出るようになり重症化すると、肺炎などにより死亡する危険性もあります。

     

    細菌性肺炎の危険性

    犬では、二次的な細菌性肺炎が発症することがあります。すでに慢性気道疾患または気管虚脱が認められている犬では、それらの慢性疾患が急性かつ重度に悪化する場合があり、動物におけるこの感染症に関連した症状が治癒するためには、長期間治療することが必要である。

     

    感染ルート

    多くの場合、ペットショップから購入したばかり、ブリーダーや動物愛護団体から譲渡されたばかりのことが多く、それ以外にも2週間以内にどこかに出かけたり、他の子犬や同様の症状を示す犬と接触したという経歴があることが多いです。

    通常、感染後1週間以内に発症します。

     

    診断

    確定診断は多くの場合は困難で、

    ・年齢(若齢)

    ・ワクチン接種歴の有無(まだワクチンを打ったことがない)

    ・入手経路(つい最近まで多頭飼育施設にいた)

    ・感染犬との接触の有無

    などを考慮したうえで臨床徴候から推測することで暫定的にケンネルコフと診断することがほとんどです。

    X線検査では通常、正常あるいは軽度の気管支パターンといわれる所見がみられるのみで、診断の一助になることはあってもX線写真だけでケンネルコフとの確定診断はくだせません。

    血液検査の数値はほぼ正常です。

     

    治療

    合併症のないケンネルコフは、時間が経てば自然治癒することが多いです。過度の咳によって起こる気道の継続的な刺激を最低限にするために、少なくとも7日間の安静、特に運動と興奮を避けることが必要です。

    軽症の場合、薬物投与は必要なく、適度な温度と湿度の環境下で安静にすれば、7~10日以内に自然治癒するといわれています。

    しかし、細菌性肺炎への重篤化を避けるため、慎重を期する、あるいは治療の必要ありと判断した場合には 抗菌薬気管支拡張薬 を使用します

    また咳が持続性あるいは顕著であれば 鎮咳剤 も使用することもありますが、鎮咳剤は、咳が湿性の場合、聴診または胸部X線写真で肺に液体が貯留していることが疑われるような場合は投与すべきではありません。

    噴霧療法(ネブライジング)も有効です。(抗生物質や気管支拡張剤などを気体状にし吸入させることで、直接、気管や気管支などの患部に薬剤を浸透させる治療です。)

    投薬を行った場合、通常1週間以内に症状の改善が認められますが、治療は約2週間続けるべきといわれています。

     

    ■抗菌薬

    広域スペクトル(多くの病原体に広く浅く効く)のものを選択します。

    テトラサイクリン、マクロライド系、ペニシリン、セファロスポリン、クロラムフェニコールなどが有効です。抗菌薬は臨床徴候が消失してからさらに5日間、または少なくとも14日間投与します。

     

    ステロイドは使用しません。Thrusfieldによる臨床試験では、単剤または抗菌薬との併用のどちらでも、ステロイド治療の利点を見出せなかったとの報告があります。

     

    ■気管支拡張薬

    交感神経作動薬であるテルブタリンや、キサンチン系気管支拡張剤であるアミノフィリンやテオフィリンが使用されます。

    後者のキサンチン系気管支拡張剤は、気管支拡張作用のほか、気道クリアランス(気道の粘膜にもともと備わっている、分泌物・異物・病原体などを口の方に運ぶはたらき)の改善抗炎症効果などがあります。

    ■鎮咳剤 

    ブトルファノールが最も効果的で、その他デキストロメトルファン、コデインなどがありますが、使用頻度は高くありません。

     

    予後

    肺炎などの合併症がなければ良好です。

     

    予防

    混合ワクチンの接種と、動物の細菌への暴露を最小限にすることによって予防できることが多いですが、

    たとえワクチンを打っていたとしても、注射型ワクチンの気道粘膜面における有効性は必ずしも確実ではないともいわれていますので、100%予防できるわけではありません。

  • 犬の膀胱移行上皮癌

    膀胱の移行上皮癌とは?

    膀胱の移行上皮癌は犬の膀胱内に発生する悪性腫瘍の中で最も発生の多い腫瘍です。猫での発生はきわめてまれです。

    膀胱三角部(尿管が膀胱に開口する付近)での発生が多く,膀胱粘膜における乳頭状病変または膀胱壁の肥厚としてみられます。多くの症例でリンパ節や骨、肺などに転移する悪性腫瘍です。また腫瘍が尿管や尿道などに浸潤し尿路を塞ぐことで排尿困難や腎不全といった重篤な症状を引き起こし,死亡する原因となります。

     

    症状・診断

    初期の症状は、頻尿・血尿・しぶり・不適切な排尿(そそう)などであり,膀胱炎や膀胱結石の症状と非常によく似ています。抗生物質などの治療に反応が悪い場合は、膀胱腫瘍の可能性も含めて、超音波検査を行います。

     

    超音波検査

    膀胱内の状態を確認するのには、超音波検査が最適となります。膀胱のどの部位にどのくらいの大きさと深さで発生しているかを確認することができます。膀胱内に腫瘤病変を認めても必ずしも全てが移行上皮癌とは限りません。慢性膀胱炎による粘膜肥厚や,乳頭腫,平滑筋腫などの良性腫瘍の場合もあります。

    これらの良性病変と移行上皮癌は、画像検査のみでは推測はできても完全には鑑別できないため,膀胱に腫瘤(しこり)を見つけた場合は以下に挙げるさらなる検査が必要となります。

     

    細胞診

    一般的に細胞診というと注射針を刺してサンプルを採取する針生検を行うことが多いですが、膀胱移行上皮癌の場合、皮膚を介して針生検を行うとその針が通った穴に沿って腫瘍細胞が播種する危険性があり、膀胱腫瘍を疑う場合は皮膚を通しての針生検は禁忌となります。

    通常、尿道からカテーテルを膀胱内に挿入し、超音波で画像を見ながらカテーテル先端を病変部に誘導し、吸引をかけて腫瘍の一部を採取します。サンプルがうまく採取できない場合は、何度か同じ検査をするか、膀胱鏡を用いて直視下でサンプルを採取することもありますが、カテーテルで細胞を採取することができるケースも多いです。

    細胞診により異型性の強い移行上皮細胞が認められれば移行上皮癌を強く疑うことができますが,中には異型性に乏しい移行上皮癌も存在するため,画像検査と細胞診だけでは確定診断とならないこともよくあります。

    V-BTA検査

    犬の移行上皮癌腫瘍マーカーです。検査は採取した尿で行うことができます。V-BTA検査は犬膀胱移行上皮癌に対して感度(移行上皮癌に罹患している動物を移行上皮癌であると疑える割合)の高い検査ですが、移行上皮癌に罹患していなくても、尿路に疾患を抱えている動物では約半数程度が偽陽性となってしまうという問題点もあります。そのため、V-BTAが陽性であっても膀胱移行上皮癌と確定することはできず、あくまで移行上皮癌を疑うための補助的な検査となります。

     

    BRAF(ビーラフ)遺伝子検査

    2015年に犬の移行上皮癌と前立腺癌に特異的な遺伝子変異が報告されました。尿に含まれる移行上皮細胞の遺伝子変異を検出する検査で,高い感度と特異度を持った検査です。簡単に言うと、移行上皮癌や前立腺癌かどうかを確認する検査です。細胞診だけでは確定診断がつかない場合に、補助検査としてとても有意義な検査です。採取した尿の沈渣により検査します。

    BRAF遺伝子の変異が陽性の場合、ほぼ100%の確率で悪性腫瘍(膀胱腫瘍では移行上皮癌、前立腺腫瘍では前立腺癌)であると考えることができます。

    陰性の場合も、BRAF遺伝子変異を持たないものが20~30%ほど存在するため、悪性腫瘍を否定はできず、細胞診の検査と併せての判断が必要となります。

     

    治療

    一般的にがんに対する三大治療と言えば外科手術,放射線治療,抗がん剤治療ですが、

    膀胱移行上皮癌の場合、完全切除の難しい膀胱三角部での発生が多いことと、仮に完全切除できたとしてもその局所浸潤性の強さと遠隔転移率の高さから再発・転移を起こすことが少なくないことから、

    いずれにしても 抗がん剤治療 が必要となります。

    膀胱移行上皮癌に対しては、様々な抗がん剤プロトコールが研究され、今まではシスプラチンミトキサントロンという抗がん剤を使うプロトコールが一般的でしたが、

    最近の報告では、2週間に一度のビンブラスチンの静脈内投与とピロキシカム(抗炎症剤)の内服の併用による治療が、前者の抗がん剤を用いた成績とほぼ同様の結果が得られており、副作用も少ないため主流になりつつあり、当院でもこのビンブラスチンとピロキシカムの併用による抗がん剤治療を第一選択としています。

    抗がん剤による副作用としては、骨髄抑制、消化器症状(嘔吐・下痢)、脱毛(まれ)が一般的ですが、人の医療で行っている抗がん剤治療の副作用のイメージほど強烈ではないことがほとんどです。

    一般に、抗がん剤治療で使用する各薬剤の投与量は、おおむね入院治療が必要になる可能性が5%以下、治療による死亡率が1%になるように考慮されています。

    ビンブラスチンの副作用としては、主に骨髄抑制が生じます。ビンブラスチン投与後およそ1週間後に出ることがほとんどです。血液中の赤血球、白血球、血小板のうち、最も寿命の短い白血球(好中球)が最も影響を受けやすく、好中球数が減少している時期は体内に侵入する病原体に対する抵抗力が落ちます。好中球数が少ない場合、予防的な抗生物質の経口投与などにより通常は大きな問題になることは少ないですが、この時期に嘔吐・下痢などの消化器症状や発熱が同時に起こると、正常な腸粘膜バリアの破壊によって腸内細菌の侵入に対する生体防御能が低下しているため、敗血症の発症に注意が必要となります。

    しかし、ビンブラスチンでは嘔吐・下痢などの消化器症状が出ることは比較的少ないです。抗がん剤投与期間中は好中球数を常にモニターする必要があり、特に抗がん剤投与1週間後の血液検査は必須となります。

    ピロキシカムは長期使用により腎障害や、その効果に耐性が起こることがあり、最近では初期のみビンブラスチンとピロキシカムを併用し、腫瘍が縮小し、症状が落ち着いたら一旦ビンブラスチンのみによる単独治療に切り替え、効果が落ちてきたら再度ピロキシカムを再開するという使い方も提案されています。

    最近の報告では,ビンブラスチン単独による治療では,

    ①奏効率36%、臨床的有用率86%、無進行期間中央値122日

    ②奏功率23%,無進行期間中央値143日,生存期間中央値407日

    などの報告があるのに対し、

    ビンブラスチンとピロキシカムを併用した治療では,奏功率58%,無進行期間中央値199日,生存期間中央値299日

    というデータがあります。

     

    また、膀胱三角部に腫瘍が発生している場合、膀胱全摘出術を行うこともありますが、生存期間中央値は141~385日と報告されており、前述の抗がん剤治療と比べてすごく成績が良いというわけではなく、膀胱全摘出まで行っても再発・転移を起こすこともあります。それに膀胱がなくなってしまえば尿をためておくことができないので、基本的には尿がたれ流しの状態になります。

    手術を行う唯一のメリットとしては、ステージの進行度によっては膀胱全摘出により根治(腫瘍の完全な根絶)の可能性があるということです。しかし、いずれにしても術後の尿のたれ流しによる衛生管理を生涯行う必要があり、抗がん剤治療でも手術と同等の生存期間が得られているため、手術は決して第一選択の治療とはいえません

    しかし、最終的に抗がん剤治療でも腫瘍が制御できなくなった場合、最も問題となるのが排尿困難です。特に、尿管が開口する膀胱三角という場所に腫瘍が発生している場合、尿路閉塞により腎不全を起こし致命的となります。その場合、命をつなぎとめるために緊急的におなかなどに尿道を開口させる尿路変更などの救済的手術を行うことがあります。

     

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    猫の乳腺腫瘍

    【猫の乳腺腫瘍の特徴】

     猫の乳腺腫瘍は約90%が悪性で、犬と比べて非常に予後が悪く、診断時にリンパ節や肺へ転移していることも少なくなく、根治の難しい悪性腫瘍です。発見から死亡までの期間は平均で10~12か月といわれます。

     

    【性別と年齢】

    未避妊の高齢(平均10~12歳)のメス猫に多く発生します。まれにオスに発生することもあります。

     

     

     

     

     

     

     

     

     【臨床ステージ分類と予後の予測】

    猫の乳腺腫瘍では、予後を予測するのにステージ分類がとても重要となります。そこで用いられるのが、世界保健機関(WHO)で定められているTNM分類と、それに基づく臨床ステージ分類です。

      T:腫瘍のひろがり

      N:リンパ節への浸潤状態

      M:遠隔転移の状態

     

    <TNM分類>      <臨床ステージ分類>

    TNM分類

    臨床ステージ分類

     

     

     

     

     

     

     

    まとめると、

    ステージⅠ:リンパ節転移がなく、腫瘍直径が2cm未満の場合

    ステージⅡ:リンパ節転移がなく、腫瘍直径が2~3cmの場合

    ステージⅢ:腫瘍直径が3cm未満でも、リンパ節転移が認められた場合

          リンパ節転移の有無に関わらず直径3cmを超えている場合

    ステージⅣ:遠隔転移が認められた場合

    となります。

     

    そして、このステージ分類による予後に関するある報告では、

     

    <臨床ステージによる予後予測> 

    ステージ分類と予後予測

     

     

     

     

     

     という結果が得られています。

    また、腫瘍サイズと生存期間の相関性が確認されており、特に腫瘍直径が3cmを超えてしまっているかどうかが重要となります。

    3cmを超えた時点で転移がなかったとしてもステージⅢとなってしまい、根治の確率が低くなってきます。

    肺転移などを起こしステージⅣに移行してしまっている場合は、余命は約1カ月となってしまいます。

     

    <避妊手術の乳腺腫瘍に対する予防効果>

    避妊手術実施時期と予防効果2

     

     

     

     

     

    1歳未満での避妊手術による乳がん発症予防効果は約90%とかなり有効です。

    大人になるにつれて徐々に予防効果は下がり、2歳を超えると予防効果はほとんどありません

    そのため乳腺腫瘍の発生リスクを下げるためには、早期、特に1歳未満での避妊手術を強くおすすめします。

     

    【治療】

    ①外科治療

     猫の乳腺腫瘍に対する治療の第一選択は外科手術です。犬では腫瘍の完全切除が可能ならば部分的な乳腺切除術も考慮されますが、猫では通常、領域リンパ節の切除を含めた片側乳腺の全摘出術が選択されます。両側の乳腺に腫瘍がある場合は片方の乳腺の全摘出術を行った1ヶ月後にもう片方の乳腺全摘出術を行います。(一度にやると術後の皮膚の張りがきつく呼吸困難を起こすため)

    また、ステージⅢ以上で根治が難しい場合でも、腫瘍が自壊を起こしてにおいや出血、膿などが出ているときは、転移状況を考慮しつつ緩和的治療としてQOL(生活の質)改善のために腫瘍の部分切除を行う場合もあります。

     

    <片側乳腺全摘出術の目的>

    片側乳腺全摘出術の一番の目的はあくまで根治をねらうことです。根治的な手術による乳腺の除去は、病変の速やかな除去と、将来的な発生リスクの減少を期待できます。ステージが低いほど、根治の可能性が高くなります。

    また、報告により差はあるものの、根治的な手術により無病生存期間や、生存期間の延長が期待できます

    腫瘍だけをくり抜いて切除しても腫瘍細胞の取り残しが出る可能性が高く、根治をねらう手術の場合は、片側(あるいは両側)乳腺全摘出術と領域リンパ節の切除が原則となります。

     

    <術後の再発率は少なくない… >

    実際には、片側乳腺全摘出術を行っても再発することは少なくなく、遠隔転移性の高さも含めると、多くの猫乳腺癌に対しては外科手術単独での根治は難しいといわれています。局所に再発が認められなくても、術後、肺やリンパ節などに遠隔転移が出てくることもあります。

    局所に再発が認められた場合、原則的に再手術が推奨されますが、そのときの猫の全身状態や余命を考慮し、本当に再手術が第一選択なのか、飼い主様の希望と合わせて相談しながらその後の治療方針を決めていきます。

     

    <避妊手術の同時実施>

    避妊手術を同時に実施することで、術後の再発率を低下させたり、生存期間を延ばしたりという報告はありません。性ホルモンとの関連性がある腫瘍なので少し前までは乳腺切除と同時の避妊手術が一般的でしたが、前述した通り2歳を越えてからの避妊手術は乳腺腫瘍の発症を抑える効果はなく、乳腺腫瘍を発症している時点で余命もある程度限られていますし、麻酔時間も延びてしまうため、最近では同時の避妊手術をしない傾向もあります。

     

    ②化学療法(抗がん剤治療)

    ステージⅢ以上、つまり腫瘍直径が3cmを超えている場合や、リンパ節や肺に転移が認められた場合、または術後の病理組織学的検査で悪性度が高かった場合は、外科手術後に補助的化学療法が推奨されます。

     ある報告では、ステージⅢの乳腺腫瘍の猫のグループにおいて、外科手術単独の生存期間中央値が180日であったのに対し、術後にドキソルビシンを投与した群では生存期間中央値が416日であったという報告もあります。

     ドキソルビシンは、基本的には3週間ごとに血管内に投与していきます。

     全く副作用がないわけではありませんし、必ずしも効果が認められるとは限りませんが、術後に化学療法を行うことで生存期間が延び、ステージⅢの猫でも1年以上生きられる可能性もあります。

  • 猫伝染性腹膜炎(FIP)

    要約


    猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルス感染が原因となって起こる免疫介在性の疾患で、特に集団飼育施設でよく認められます。ほとんどの猫は誕生後すぐに他の猫の糞便などから猫腸コロナウイルスに暴露しますが、そのほとんどは、無症状もしくは軽度の腸炎を示すのみです。

    しかし、一部の猫、特に若齢の猫や多頭飼育環境下の猫では、猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症することがあります。

    猫コロナウイルス感染猫のうち、12%程度がFIPを発症します。

    FIPを発症する要因として、猫コロナウイルス感染猫へのストレスがきっかけと考えられていますが、それにより猫コロナウイルス猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に変異を起こすと考えられています。

     

     

    感染


    FIPの発症要因となる猫コロナウイルスの感染源は主に糞便です。つまり、猫用トイレが主に感染場所となります。唾液中に猫コロナウイルス遺伝子が検出されることがあるので、食器の共有には注意が必要ですが、実際には食器の共有によって感染することはほとんどありません。

    猫コロナウイルスに感染した猫と一緒に住んでいる場合(特にトイレを共有している場合)、ほぼすべての猫が猫コロナウイルスに感染します。

    猫コロナウイルス感染猫の9頭に1頭(約12%)は、致死性の疾患であるFIPを発症します。

     猫コロナウイルスは、屋外や多頭飼育施設などありとあらゆるところで感染する可能性があり、実はほとんどの猫が一度は猫コロナウイルスに曝露したことがあるといっても過言ではありません。そのため、多くの健康猫が猫コロナウイルス抗体陽性を示しますが、ほとんどの猫はFIPを発症しません。つまり、猫コロナウイルスに感染しても、FIPを発症するとは限りません。また、便中に排出される猫腸コロナウイルスも陰転する(検出されなくなる)こともあります。

    多頭飼育環境においてFIPが発生してしまった場合でも、FIPそのものが猫から猫へ水平感染することはほとんどありませんが、FIP発症の原因となる猫コロナウイルスの水平感染は十分にあり得ます。(FIPの水平感染の報告はまれですがあります)

    猫コロナウイルスに感染しないように気を付けることでFIP発症を回避できるとされていますが、猫コロナウイルス感染猫と一つ屋根の下に暮らしている以上はほぼ感染は免れないため、多頭飼育下に一頭でも猫コロナウイルス感染猫がいる場合、現実的に他の猫が猫コロナウイルスへの感染を回避することは厳しいといえます。

     

    FIPVへの突然変異


     猫コロナウイルスのうち、胃腸炎を起こす猫腸コロナウイルス(FECV)が、腸管内で突然変異を起こして猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)へと変わり、腸管内から血液中に侵入し体内に広がることで発症します。

    その変異の要因として、ストレス、猫自身の体質、ウイルス自身の性質、など様々な要因が挙げられていますが、本当のところはわかっていません。ストレスが引き金とよくいわれる理由として、集団飼育によるストレスから免疫力の低下や自然抵抗性の低下が引き起こされることが考えられます。

    猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)などの感染による免疫抑制も、FIP発症率を高める原因となるといわれています。

     

    好発年齢


    猫の年齢もFIP発症に関わる重要な要因です。

    FIP発症猫の約70%が1歳齢未満の猫といわれています。しかし、高齢の猫でもFIPを発症することがあります。

     

    症状


     FIPの病型は、多発性漿膜炎(腹腔や胸腔の浸出液貯留)と血管炎を特徴とするウェットタイプ(滲出型)と、各臓器における多発性肉芽腫性病変を特徴とするドライタイプ(非滲出型)、そしてそれらの混合タイプの3つになります。

     ウェットタイプの方が進行が速く、診断後、2週間~1カ月程度で亡くなってしまうことも少なくありません。

    一般的な症状としては、抗生物質に反応しない発熱、沈うつ、食欲不振、体重減少、黄疸(白目や歯茎が黄色くなる)、呼吸困難、おなかの張り、などが認められます。

    ウェットタイプで胸水貯留がある場合は呼吸困難、腹水貯留がある場合はおなかの張りが認められます。

    ドライタイプではどの臓器に病変が認められるかによって症状が異なります。腎臓に病変が形成された場合は腎腫大、消化管に形成された場合は嘔吐や下痢などの症状がみられます。また、ドライタイプでは、眼病変、すなわち、虹彩の色調変化、瞳孔異常、失明、前眼房出血などがみられることがあります。

    まれに起立困難、痙攣発作、知覚過敏、行動異常などの神経症状を示すこともあります。

     

     

     

     

     

     

     

    診断


    ウェットタイプの場合は針吸引にて採取した胸水や腹水の性状やその液体中の猫コロナウイルスの存在の有無(PCR検査)と、症状、血液検査所見、リバルタ反応試験などの所見を総合してほぼ診断がつきます。このとき採取した胸水や腹水が黄色を呈していることが多いです。

    ドライタイプの場合は超音波検査で肉芽腫性病変がはっきりと確認できれば、その病変に針吸引生検を行い、そのサンプル中の猫コロナウイルスの存在の有無(PCR検査)を調べることで診断がつくこともありますが、肉芽腫性病変が確認できない場合は、診断が困難なこともあります。

     

    治療


    レムデシビル、GS-441524、モルヌピラビルなどの抗ウイルス薬の投与により治療が可能になりました。

    当院での詳しい治療内容は、こちらをご参照ください。

     

    ワクチン


     FIPウイルスに対するワクチンはこれまで数多く研究されてきましたが、残念ながら有効なワクチンが確立されていないのが現状です。

     

    予後


    治療しなければほぼ確実に亡くなってしまいますが、抗ウイルス薬による治療を行うと80~90%で治すことができます。ただし、治療には高額な治療費がかかることと、再発率は0%ではありません。

     

    消毒


    猫コロナウイルスは、猫の体外では比較的弱く、アルコール、クロルヘキシジン、次亜塩素酸、家庭用漂白剤、洗剤などですぐに死滅・失活されます。

    しかし、乾燥した環境下では7週間失活しません。この間には、猫用トイレ、靴、手や服を介して間接的に感染する可能性がありますので、徹底的に消毒を行いましょう。