千葉‧⾹取市佐原の動物病院「オリーブペットクリニック」2014年12⽉開院!

オリーブペットクリニック

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皮膚科

  • 犬アトピー性皮膚炎の治療薬「サイトポイント」詳細

    「サイトポイント」詳細

     

     

     

     

     

     

     

    ①有効成分;ロキベトマブ

    ②特徴

    1回の注射で約1カ月間、犬アトピー性皮膚炎による症状(主に痒み)を緩和する長期持続型のお薬

    ③作用機序

    痒みを誘発する主なサイトカイン(体内生理活性物質)であるインターロイキン31という物質を特異的に中和し、痒みのサイクルを断ち切ります。

    ④注射プログラム

    初めの4カ月間は、1カ月に1回の注射。

    それ以降は、約1カ月ごと、あるいは痒みがぶり返して来たら速やかに適宜追加注射を行う。

    個体差によって、2~3週間で痒みが再発する子もいれば、反対に1カ月以上もつ子もいます。2カ月あくと痒みがぶり返す可能性があります。

    ただ、アトピー性皮膚炎には痒みの増減に季節性があることが多いので、環境アレルゲンの比較的少ない冬季は、注射の間隔を少し延ばせるかもしれません。

     


    有効性

    犬アトピー性皮膚炎において、痒みを引き起こすインターロイキン31という物質が関与している症例は6~7割程度だそうです。

    つまり、インターロイキン31のみを特異的に中和する薬であるサイトポイントが有効な症例は実際には6~7割ということです

    サイトポイントが有効な場合、痒みを抑える効果の発現は、早い子で注射後3~4時間、遅い子で3~5日前後、長くみても1週間以内には効果が出るそうです。このように効き始めには多少ばらつきがあるようです。

    1週間経っても効果がない場合は、このサイトポイントが効かない子かもしれません。

    しかし残念ながら、事前にサイトポイントが有効なのか有効ではないのかを調べる検査は今のところありません。

    確認のためには実際に打ってみるしかありません。

    また、サイトポイントが有効な子の場合、その効果は毎月注射するごとに徐々に高まっていき、約4カ月目頃に最大効果に達するようになり、それ以降も定期的な注射を続けていくことで安定した効果が認められます。

    途中で完全にやめてしまうと、お薬の効果は最終的には完全に切れてしまいます。

    サイトポイントを実際に使用している先生方の報告だと、柴犬の犬アトピー性皮膚炎にはサイトポイントが有効な子が比較的多いそうです。


     

    副作用や注意点

    まず、サイトポイントによる副作用は限りなく少ない(ほとんどない)そうです。国内で使用可能になった現時点までに、海外のデータを含めると約100万回投与されているとのことですが、高い安全性の成績が得られているそうです。短期・長期的な有害作用の報告もなく、臓器毒性の報告もありません。

    注射時の痛みもほぼありません。

    非常に若い犬(6カ月齢以上)にも使用可能で、併用薬にも制限はありません。

    ただし、3kg未満の犬では打つことができません。(臨床試験による安全性が確認できていないため)

    サイトポイントは抗体製剤ということで蛋白質の入ったお薬ですので、理論上、注射後にアレルギー反応が生じる可能性がありますが、臨床試験の結果では注射後にアレルギー反応が起こる可能性は限りなく少ない(ほぼない)そうです。

    まれにサイトポイント中の抗体に対する抗体がつくられてしまうと効果が減弱する可能性がありますが、開発中に行われた試験では、521頭の犬のうち抗体を獲得した犬はわずか7頭(1.3%)だったそうです。

    混合ワクチンとの同時注射はできません。(1週間程度ずらした方がいいそうです。)

    サイトポイントが有効な子では、現在飲んでいるお薬を徐々に減量、最終的には休薬を目指し、定期的なサイトポイントの注射のみで痒みをコントロールしていけるかを判断していきます。うまくいけば飲み薬を一切やめて、定期的な(約1カ月に1回の)サイトポイントの注射のみで痒みを抑えていくことができるかもしれません。

    しかし、現在飲んでいる飲み薬をサイトポイントの注射を併用することで減量できたとしても、完全にやめることはできない可能性もあります。

    サイトポイントはあくまで「アトピー性皮膚炎」に対して有効な薬であり、食物アレルギーには無効です。(花粉・ハウスダストなどの環境アレルゲンによるものがアトピー性皮膚炎、摂取した食物アレルゲンによるものが食物アレルギーです)

    そのため、理想的にはサイトポイントによる治療を始める前に、アレルギー検査を行い、アトピー性皮膚炎かどうかを調べてからサイトポイントによる治療を開始することが好ましいのですが、このアレルギー検査がとにかく高い!(4万円ほどします…。)

    サイトポイントは副作用がほぼないお薬であること、それから仮にアトピー性皮膚炎であっても有効な症例は6~7割で、最終的には打ってみないと効果がわからないという特徴をもっていることから、場合によってはアトピー性皮膚炎が疑わしいワンちゃんは、アレルギー検査を省略してサイトポイントを実際打って判断していく、ということも少なくないそうです。

    また、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの両方をもっているワンちゃんでは、サイトポイントの注射+食事療法を行う必要があります。

     


    治療費

    サイトポイントは犬の体格にあわせて、10mg、20mg、30mg、40mgと4種類あり、下記のように、体重ごとにそれぞれのサイズのサイトポイントを1瓶ずつ注射することになっています。

    当院でのサイトポイント 1回の注射代(税抜)料金は、

    3.0 kg ~ 10.0kg →¥9,300 (10mg製剤1本を注射)

    10.1kg ~ 20.0kg →\12,700 (20mg製剤1本を注射) 

    20.1kg ~ 30.0kg →\18,100 (30mg製剤1本を注射)

    30.1kg ~ 40.0kg →\20,500 (40mg製剤1本を注射)

    となります。

     


    まとめ

    サイトポイントは毎日飲み薬を飲ませている飼い主様の負担、また実際にお薬を飲んでいるワンちゃんの負担を軽減させてくれるかもしれません。特に、ワンちゃんが薬を飲むのを嫌がって、毎日投薬するのがちょっと大変…という飼い主様には朗報かもしれません。

    しかし、実際に有効な症例はアトピー性皮膚炎をもっているワンちゃんのうち6~7割と、すべての子に有効でないところがちょっと残念なところです。

    でも6~7割というと、ほとんどの子に有効、ともいえます。

    有効かどうかは実際にサイトポイントの注射を打ってみないとわかりません。

    この記事を読んで、サイトポイント注射によるメリットを感じた飼い主様は、一度ためしてみてもいいかもしれません。

    ただ、コスパ的にいうと少し高いかもしれません。特に、プレドニゾロン(ステロイド)のみでの治療と比較するとだいぶ高くなってしまうかもしれませんが、ステロイド長期投与による副作用の可能性を考えると、その点、副作用のほぼないサイトポイントは体への負担は少ないかもしれません。

    プレドニゾロンよりもやや価格の高いアポキル錠を毎日投薬しているワンちゃんの場合は、毎日の投薬の手間も考えると、サイトポイント注射も検討されてもいいかもしれません。

    報告によると、アポキル錠のみを1日1回で投薬し良好にコントロールできているワンちゃんに対し、サイトポイントに切り替えた際、そのまま痒みを良好にコントロールできた症例は92.5%だそうです。

    サイトポイントは、いわば「痒み止め」のお薬です。赤みを伴う炎症を起こしている皮膚には、消炎効果は基本的にありません。

    副作用がほとんどないことと、毎日の投薬をしなくていいところがサイトポイントの良いところですが、皮膚炎を起こしてしまっている場合は、やはりステロイドやアポキル錠などの飲み薬、あるいは塗り薬を必要に応じて併用し、アトピーによる症状を複合的に抑えていく必要があります。

    アトピーという体質そのものを治すお薬は残念ながら今のところありませんが、生涯つきあっていかなければいけないこの疾患に対し、心強い治療薬が一つ増えたことには違いありません。

    ご興味のある方は、ぜひご相談ください。

    ※現在、流通の関係で入手困難な状況にあります。入荷しましたらまたご連絡致します。

  • アレルギー性皮膚炎 ~入門編~

    まずはアレルギーを語るには欠かせない IgEについて知ろう


    IgEとは、血液中に存在する免疫グロブリンといわれる免疫に関わるタンパク質の一種で、からだの中にアレルギーの原因物質(アレルゲン)が侵入してきたときにからだを守る働きをもつ抗体です。

     

     

    犬アトピー性皮膚炎とは


    ひとことでいうと、環境アレルゲンに対するアレルギーのことです。

    例えば、花粉、、ダニ、カビなどで、食物アレルゲンによるアレルギー反応はアトピー性皮膚炎に含まれません。

    犬アトピー性皮膚炎に特徴的な、腋窩(わきの下)、大腿部内側(内また周囲)、四肢の屈曲部における痒みを伴う慢性の皮膚炎が存在し、検査の結果、環境アレルゲンに対するIgEが検出された場合、アトピー性皮膚炎と診断されます。

    環境アレルゲンが悪さをするピークは、それぞれ季節によって異なり、症状の程度に季節性がある場合は、アトピー性皮膚炎の可能性がより高いといえます。

     

     

    食物アレルギーとは


    環境アレルゲンが原因の犬アトピー性皮膚炎とは違い、食物アレルゲンが原因のアレルギーとなります。

    症状の出方には大きく2つのパターンがあります。

     

    1.目や口の周り、背中などに皮膚炎が出る典型的なパターン

    →かなりの確率で食物アレルギーを疑うことができる。

     

    2.犬アトピー性皮膚炎による皮膚症状と似ているパターン

    →見た目だけでは、食物アレルギーなのか、アトピー性皮膚炎なのか区別することはできない。

     

    また、食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎と違って、

    IgEの反応によるもの と リンパ球の反応によるもの 

    の2つのメカニズムがあります。

    したがって、食物アレルギーの可能性も疑われる場合、IgEとリンパ球の両方の検査を行わなければ見逃しを生じてしまう危険性があります。

     

     

    アトピー性皮膚炎か食物アレルギーかを見分けるポイント


    食物アレルギーに特徴的なサインとして、

    ①1歳未満から痒みがある

    ②季節を問わず、一年中痒い

    ③1日3回以上の排便

    ④目・口の周囲、背中に痒みがある 

    があげられ、1つでも該当する場合、食物アレルギーの疑いをもつ必要があります。

    反対に、1つもあてはまらず、でもやはり経過的にアレルギーが疑われる場合、犬アトピー性皮膚炎を疑う必要があります。

     

     

    実際には、アレルギー性皮膚炎は3パターンに分かれる


    ①犬アトピー性皮膚炎

    ②食物アレルギー

    ③アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの混合型

     

     

    痒みがない場合はアレルギーではない!?


     

    アレルギーの場合は、ほぼ必ず痒みを伴います。

    痒くないアレルギーはありません。

    しかし、痒みの原因はアレルギーだけではなく、ノミやダニなどの寄生虫、微生物(細菌や真菌)なども痒みの原因となります。

    アレルギー性皮膚炎の場合、皮膚のコンディションの悪化により、これらの病原体が増えやすい状態になっていますので、まずは基本的な検査により、これら(寄生虫や微生物)の有無を確認し、もしいた場合はそれらを治療したうえで、それでも痒みが続く場合は、いよいよアレルギーの可能性を疑っていきます。

     

     

    アレルギーの痒みの特徴


    アレルギーによる痒みが生じる部位はある程度決まっています。

    腋窩(わきの下)、肘の内側、内また、四肢端(手や足の先)、肛門周囲、耳、目や口の周囲、背中です。

    これらの部位に痒みを伴う場合、アレルギーの可能性が高くなります。

    この中で、特に目・口の周囲と背中に関しては、犬アトピー性皮膚炎で起こることはまれで、多くが食物アレルギーによって起こります。

     

     

    アレルギーを疑った際にすべきこと


    痒みを伴う皮膚炎に対し、寄生虫や微生物などの病原体の有無を確認し、それらが除外されたうえでも痒みが残る場合、アレルギー性皮膚炎が疑われますが、その次は実際にはどのような検査をしたら、犬アトピー性皮膚炎なのか、食物アレルギーなのかを正確に分けられるのでしょうか。

     

    ①アレルギー検査

    検査費用が高い(すべての項目を行うと4万円…ほどかかる 😯 )のがネックになりますが、保険に入っている方は保険対象になることもありますし、この検査をしなければ、結局何に対して反応しているのかがわからないので、憶測の範囲でアレルギーの治療をしていかなければいけません。

    しかし、やはり費用的な問題でアレルギー検査が難しい場合は、②の除去食試験から実施してみるのもいいでしょう。

    その後、やはり必要であれば、再度アレルギー検査の実施について検討してみてもいいと思います。

    検査は、採血を行い、血液を検査センターに送るだけです。

    当院が委託している動物アレルギー検査会社では、以下の項目について調べることができます。

    特徴的な症状があって、IgE検査で環境アレルゲンに対するIgE値が上昇している症例は、犬アトピー性皮膚炎との診断となります。

    IgE検査でどのアレルゲンにもIgE値の上昇がみられなかった場合は、犬アトピー性皮膚炎の可能性は低くなります。

    (※上記の代表項目以外にも、環境アレルゲンは無数にありますので、完全には否定できません。ただし、上記以外の環境アレルゲンがアトピー性皮膚炎の原因となることは比較的まれであると考えられます。)

     

    IgE検査とリンパ球反応検査で食物アレルゲンに対して、陽性域あるいは要注意域の値を検出したら、かなり高い確率で食物アレルギーと考えられます。

     

    ②除去食試験

    検査結果からアレルゲンとして反応している食物が入っていない食事を与える食事療法のことを「除去食療法」といい、この食事療法により実際にアレルギーの症状が軽減あるいは消失するかを確認することを「除去食試験」といいます。

    検査結果から正しく選んだ除去食のみを、他の食べ物を食べさせないようにしてきちんと与えていると、食物アレルギーだけが痒みの原因であった場合は早くて3週間目くらいから症状が改善してきます。

    ただし、万が一、除去食と異なるものをちょっとでも食べてしまった場合には、目的の治療が行われていないことになり、治療効果の判定が難しくなってしまいます。

    症状が改善した場合は問題ありませんが、期待したような改善がみられなかった場合、除去食試験がうまくいっていないのか、治療方針が間違っていたのか、判断することができなくなってしまいます。

     

     

    犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギーが混在していたら…


    検査の結果、両者が混在しているタイプの場合、まずは除去食療法を行い、3週間ほどして除去食の効果が出てきて食物アレルギーが治まってきたら、痒みは少し治まってくるはずですが、ここで残った痒みが犬アトピー性皮膚炎による痒みと考えられます。

    つまり、食物アレルギーに対しての食事療法と、犬アトピー性皮膚炎に対しての内科治療の両方を平行して行う必要があります。