千葉‧⾹取市佐原の動物病院「オリーブペットクリニック」2014年12⽉開院!

オリーブペットクリニック

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子宮蓄膿症

子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)とは

子宮内への大腸菌などの細菌感染による子宮内膜炎を起こして子宮内に膿液が貯留し、やがて全身的な感染症を起こす命に関わる疾患です。通常6~7歳以上の避妊手術を行っていないワンちゃんで、発情(生理)から1~2ヶ月後に発症します。まれに若い年齢でも発症することがあります。

犬は人のような閉経がなく、寿命がくるまで卵巣が機能しているため、生涯、この子宮蓄膿症を発症する可能性があります。高齢犬になるほど発情徴候がわかりづらくなり、発情が来ていたことに家族が気づかないことも多いため、気がついたら子宮蓄膿症を発症していたということもあり得ます。

子宮蓄膿症は、子宮頸管という子宮の根元にある構造が開いているか閉じているかによって、開放性と閉塞性に分類され、開放性では血液や膿などの分泌物が陰部から排出されますが、閉塞性では陰部からの分泌物はみられず子宮がパンパンになるほど中に膿をため込むため、閉塞性の方が重篤化しやすいです。


ホルモンの影響

子宮蓄膿症の発症要因には、エストロジェン(卵胞ホルモン)プロジェステロン(黄体ホルモン)のホルモンが深く関与しています。

エストロジェン(卵胞ホルモン)は排卵前に血中への分泌量が増え、排卵後はエストロジェンの分泌量は減り、プロジェステロン(黄体ホルモン)の分泌量が増えます。排卵後は妊娠の有無に関わらずプロジェステロンの分泌が長期間(約2ヶ月間)持続します。

プロジェステロンは子宮内膜を増殖させ、子宮腺の発達により豊富な分泌液が産生され子宮腺腔内を満たします。また、プロジェステロンは子宮筋の自発運動の抑制および子宮頸管の緊縮を起こし、子宮内腔を閉鎖・隔離してしまううえに、プロジェステロンが分泌されている期間は子宮内での白血球反応が抑制されます。これらのことは子宮内での細菌の増殖に適した環境をつくってしまいます。


原因菌

膿液中に検出される細菌のほとんどが大腸菌であることが知られています。病状の進行には大腸菌の産生するエンドトキシンという毒素が深く関与しており、子宮に分布している血管から血液中にエンドトキシンが流入し、全身に回って中毒症状を引き起こします。


症状

食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、外陰部から血膿などの分泌物排出、腹部の膨満、嘔吐、下痢などがみられます。

外陰部からの排膿は閉鎖性子宮蓄膿症ではみられません。閉鎖性の方が開放性よりも中毒症状が重い傾向にあり、敗血症、腎不全、膵炎、DIC(播種性血管内凝固)などを引き起こしていると手遅れの場合もあります。


診断

血液検査:白血球数の増加、CRP(炎症マーカー値)の上昇

エコー検査:子宮内の液体貯留

X線検査(撮らないこともある):腹腔内の腫大した占拠性構造物

などから子宮蓄膿症と判断します。


治療

①手術

第一選択は卵巣および腫大した子宮の摘出手術です。

麻酔のリスクはゼロではありませんが、手術が無事成功すればその後の救命率は90%以上とかなり高いです。手術後もすでに全身に回ってしまっている細菌感染や、大腸菌の産生するエンドトキシンという毒素の影響が消失するまでは油断はできません。そのため術後も抗生物質の投与と輸液療法をしっかり行い、順調にいけば約2~3日ほどで退院できます。

手術前の時点ですでにきわめて重度の感染が起こっており、血液検査で白血球数の上昇以外に血小板値の減少がみられ、敗血症やDIC(播種性血管内凝固)という状態に陥ってしまっている場合は、手術の成功に関わらず、入院期間中に亡くなってしまう可能性も十分に考えられます。

②内科治療

内科的治療は抗生物質、プロスタグランジン製剤、プロジェステロン受容体拮抗薬、抗プロラクチン薬などを用いた治療がありますが、いったん症状が改善しても発情が来るたびにまた再発する可能性が高いこと、治癒までに時間がかかることなどから、よほど高齢か麻酔をかけられない基礎疾患がない限りは通常は外科治療が選択されます。

1)プロスタグランジン製剤(クロプロステノール)

子宮平滑筋収縮作用により子宮内に貯留している膿液の排出を促し、さらに黄体退行作用により子宮内環境が変化して細菌増殖が抑制されます。また、血中プロジェステロン濃度の低下により子宮頸管のロックが解除されることも、排膿が促される要因となります。

投与後は一過性に嘔吐、呼吸促迫、流涎、下痢、血圧上昇、心拍数増加、体温低下などの副作用が報告されており、中~重度の心臓疾患のある犬では死亡のリスクもあるため使用できません。また、閉鎖性子宮蓄膿症では子宮平滑筋収縮作用が強く現れると子宮破裂を起こす危険性があるため、使用には注意が必要です。低用量から投与を開始し、子宮頸管が解放してから投与量を増やすことで閉鎖性子宮蓄膿症でも治療が成功したという報告もあるようです。

副作用はだいたい1~2時間以内に起こり、4時間後には消失するため、投与後はなるべく入院により様子を観察する必要があります。副作用を軽減するため2~3回に分けて少量ずつ投与する少量分割投与が推奨されています。

2)プロジェステロン受容体拮抗薬(アグレプリストン、商品名:アリジン)

プロジェステロン受容体拮抗薬の投与により、子宮内の環境を黄体期から脱し、細菌の増殖を抑制し、プロジェステロンの支配を受けていた子宮頸管を弛緩させロックを解除します。これにより排膿が促されます。

プロスタグランジン製剤を使用することのできない心臓疾患を抱えた犬や、閉鎖性子宮蓄膿症の場合でも投与が可能です。

最大の欠点は、国内での入手が困難ということです。

(※プロジェステロン受容体拮抗薬を用いた内科治療は当院では行っておりません。)

3)抗プロラクチン薬(カベルゴリン、商品名:カバサール)

脳下垂体から分泌されるプロラクチン(黄体刺激ホルモン)は黄体に作用してプロジェステロンの分泌を促します。そのため、抗プロラクチン薬を投与すると黄体が退行します。

カベルゴリンはまれに(3%ほど)嘔吐がみられる以外に副作用がないため安全に投与することができます。

欠点は単独投与だと完全に黄体が退行するまでに時間がかかることです。低用量(1μg/kg)のプロスタグランジン製剤との併用投与により黄体退行期間が短縮されます。

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