今回はおなかのなかにある脾臓(ひぞう)という臓器についてお話したいと思います。ワンちゃん、ネコちゃんに共通したお話ですが、どちらかというとワンちゃんに多い印象があります。
1.ひ臓ってなに?
ひ臓はおなかの中のやや左寄りにある、大きな舌(ベロ)のような形をした紫色の臓器です。ひ臓内には多くの血液が流れ、ここを通る際に血液中の異物や老廃物を取り除き、いわば、血液をきれいにするフィルターの役割を果たしています。また、もう一つの大きな役割として、体内に侵入した病原体からからだを守る免疫のはたらきももっています。
2.ひ臓がトラブルを起こすと…
中年齢(7~8歳程度)を越えてくると、ひ臓にも何らかのトラブルがでることがあります。ひ臓の疾患としてだいたい共通していえることは、「腫れる」ということです。このことを脾腫(ひしゅ)といいます。しかし、その「腫れる」原因はさまざまです。脾腫にはひ臓の一部が腫れるものと、全体的に大きくなるものとがあります。
3.ひ臓の病気はどうやって見つけるの?
ひ臓の病気の特徴として一ついえることは「早期発見が難しい」ということです。
その理由として、
①ひ臓にトラブルが起こっていても、初期ではほとんど症状を示さないこと
②おなかの中にあるので、外見からは異常に気づきにくい
③血液検査でも初期ではほとんど異常値がみられないこと
④初期の小さな病巣では、レントゲンでもわからないことが多い
などがあげられます。
しかし、初期の病変でも見つけることができる検査として、超音波検査が有効です。
中年齢を越えたら、何も症状がなくても定期的にペットドックなどを行うことで、早期発見につながるかもしれません。
また、最近おなかがやたらふくれてきたなぁと思ったら、ひ臓を含めおなかの中の何らかの臓器に腫瘍(がん)などの大きなしこりができていたり、腹水がたまっている可能性があります。おなかがふくれて飼い主さんがわかるくらいになると、病状もすでにだいぶ進行しているケースもありますので、おかしいと思ったら早く受診するようにしましょう。
4.ひ臓に多い代表的な病気
①腫瘍(がん)
ひ臓にしこりができた場合、2/3は悪性腫瘍、さらにその2/3は血管肉腫というがんだといわれています。血管肉腫というがんは、非常に悪性度が高く、血液を豊富に含む腫瘍で、大きくなるとおなかの中で破けて破裂し、大量出血を起こすことがあります。また、転移も起こしやすく、心臓や肺、おなかの中の他の臓器にも転移することがあります。
②血腫(けっしゅ)
ひ臓内で出血が起こり、血液がたまってかたまった塊のことです。巨大なしこりをつくり、周りの臓器と癒着(ゆちゃく)していることもありますが、無事手術によって塊ごと脾臓を摘出できれば完治も望めます。
③過形成
加齢性の変化による良性病変です。
④髄外造血(ずいがいぞうけつ)
ひ臓には血液をつくるはたらきもあります。何らかの原因により重度の貧血を起こしている場合、ひ臓での造血により脾腫が起こることがあります。
5.ひ臓にしこりが見つかったら?
ひ臓にしこりが見つかっても、それが悪性腫瘍なのか、血腫なのか、良性病変なのかの鑑別は、レントゲン、超音波検査などの画像検査では難しく、多くの場合はおなかを開けてひ臓を摘出し、それを検査会社に送って病理組織検査を行うことで確定診断がつきます。
悪性腫瘍でなければ、ひ臓の摘出手術により完治することもあります。
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