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猫の乳腺腫瘍

犬の膀胱移行上皮癌

2019年10月12日|,

膀胱の移行上皮癌とは?

膀胱の移行上皮癌は犬の膀胱内に発生する悪性腫瘍の中で最も発生の多い腫瘍です。猫での発生はきわめてまれです。

膀胱三角部(尿管が膀胱に開口する付近)での発生が多く,膀胱粘膜における乳頭状病変または膀胱壁の肥厚としてみられます。多くの症例でリンパ節や骨、肺などに転移する悪性腫瘍です。また腫瘍が尿管や尿道などに浸潤し尿路を塞ぐことで排尿困難や腎不全といった重篤な症状を引き起こし,死亡する原因となります。

 

症状・診断

初期の症状は、頻尿・血尿・しぶり・不適切な排尿(そそう)などであり,膀胱炎や膀胱結石の症状と非常によく似ています。抗生物質などの治療に反応が悪い場合は、膀胱腫瘍の可能性も含めて、超音波検査を行います。

 

超音波検査

膀胱内の状態を確認するのには、超音波検査が最適となります。膀胱のどの部位にどのくらいの大きさと深さで発生しているかを確認することができます。膀胱内に腫瘤病変を認めても必ずしも全てが移行上皮癌とは限りません。慢性膀胱炎による粘膜肥厚や,乳頭腫,平滑筋腫などの良性腫瘍の場合もあります。

これらの良性病変と移行上皮癌は、画像検査のみでは推測はできても完全には鑑別できないため,膀胱に腫瘤(しこり)を見つけた場合は以下に挙げるさらなる検査が必要となります。

 

細胞診

一般的に細胞診というと注射針を刺してサンプルを採取する針生検を行うことが多いですが、膀胱移行上皮癌の場合、皮膚を介して針生検を行うとその針が通った穴に沿って腫瘍細胞が播種する危険性があり、膀胱腫瘍を疑う場合は皮膚を通しての針生検は禁忌となります。

通常、尿道からカテーテルを膀胱内に挿入し、超音波で画像を見ながらカテーテル先端を病変部に誘導し、吸引をかけて腫瘍の一部を採取します。サンプルがうまく採取できない場合は、何度か同じ検査をするか、膀胱鏡を用いて直視下でサンプルを採取することもありますが、カテーテルで細胞を採取することができるケースも多いです。

細胞診により異型性の強い移行上皮細胞が認められれば移行上皮癌を強く疑うことができますが,中には異型性に乏しい移行上皮癌も存在するため,画像検査と細胞診だけでは確定診断とならないこともよくあります。

V-BTA検査

犬の移行上皮癌腫瘍マーカーです。検査は採取した尿で行うことができます。V-BTA検査は犬膀胱移行上皮癌に対して感度(移行上皮癌に罹患している動物を移行上皮癌であると疑える割合)の高い検査ですが、移行上皮癌に罹患していなくても、尿路に疾患を抱えている動物では約半数程度が偽陽性となってしまうという問題点もあります。そのため、V-BTAが陽性であっても膀胱移行上皮癌と確定することはできず、あくまで移行上皮癌を疑うための補助的な検査となります。

 

BRAF(ビーラフ)遺伝子検査

2015年に犬の移行上皮癌と前立腺癌に特異的な遺伝子変異が報告されました。尿に含まれる移行上皮細胞の遺伝子変異を検出する検査で,高い感度と特異度を持った検査です。簡単に言うと、移行上皮癌や前立腺癌かどうかを確認する検査です。細胞診だけでは確定診断がつかない場合に、補助検査としてとても有意義な検査です。採取した尿の沈渣により検査します。

BRAF遺伝子の変異が陽性の場合、ほぼ100%の確率で悪性腫瘍(膀胱腫瘍では移行上皮癌、前立腺腫瘍では前立腺癌)であると考えることができます。

陰性の場合も、BRAF遺伝子変異を持たないものが20~30%ほど存在するため、悪性腫瘍を否定はできず、細胞診の検査と併せての判断が必要となります。

 

治療

一般的にがんに対する三大治療と言えば外科手術,放射線治療,抗がん剤治療ですが、

膀胱移行上皮癌の場合、完全切除の難しい膀胱三角部での発生が多いことと、仮に完全切除できたとしてもその局所浸潤性の強さと遠隔転移率の高さから再発・転移を起こすことが少なくないことから、

いずれにしても 抗がん剤治療 が必要となります。

膀胱移行上皮癌に対しては、様々な抗がん剤プロトコールが研究され、今まではシスプラチンミトキサントロンという抗がん剤を使うプロトコールが一般的でしたが、

最近の報告では、2週間に一度のビンブラスチンの静脈内投与とピロキシカム(抗炎症剤)の内服の併用による治療が、前者の抗がん剤を用いた成績とほぼ同様の結果が得られており、副作用も少ないため主流になりつつあり、当院でもこのビンブラスチンとピロキシカムの併用による抗がん剤治療を第一選択としています。

抗がん剤による副作用としては、骨髄抑制、消化器症状(嘔吐・下痢)、脱毛(まれ)が一般的ですが、人の医療で行っている抗がん剤治療の副作用のイメージほど強烈ではないことがほとんどです。

一般に、抗がん剤治療で使用する各薬剤の投与量は、おおむね入院治療が必要になる可能性が5%以下、治療による死亡率が1%になるように考慮されています。

ビンブラスチンの副作用としては、主に骨髄抑制が生じます。ビンブラスチン投与後およそ1週間後に出ることがほとんどです。血液中の赤血球、白血球、血小板のうち、最も寿命の短い白血球(好中球)が最も影響を受けやすく、好中球数が減少している時期は体内に侵入する病原体に対する抵抗力が落ちます。好中球数が少ない場合、予防的な抗生物質の経口投与などにより通常は大きな問題になることは少ないですが、この時期に嘔吐・下痢などの消化器症状や発熱が同時に起こると、正常な腸粘膜バリアの破壊によって腸内細菌の侵入に対する生体防御能が低下しているため、敗血症の発症に注意が必要となります。

しかし、ビンブラスチンでは嘔吐・下痢などの消化器症状が出ることは比較的少ないです。抗がん剤投与期間中は好中球数を常にモニターする必要があり、特に抗がん剤投与1週間後の血液検査は必須となります。

ピロキシカムは長期使用により腎障害や、その効果に耐性が起こることがあり、最近では初期のみビンブラスチンとピロキシカムを併用し、腫瘍が縮小し、症状が落ち着いたら一旦ビンブラスチンのみによる単独治療に切り替え、効果が落ちてきたら再度ピロキシカムを再開するという使い方も提案されています。

最近の報告では,ビンブラスチン単独による治療では,

①奏効率36%、臨床的有用率86%、無進行期間中央値122日

②奏功率23%,無進行期間中央値143日,生存期間中央値407日

などの報告があるのに対し、

ビンブラスチンとピロキシカムを併用した治療では,奏功率58%,無進行期間中央値199日,生存期間中央値299日

というデータがあります。

 

また、膀胱三角部に腫瘍が発生している場合、膀胱全摘出術を行うこともありますが、生存期間中央値は141~385日と報告されており、前述の抗がん剤治療と比べてすごく成績が良いというわけではなく、膀胱全摘出まで行っても再発・転移を起こすこともあります。それに膀胱がなくなってしまえば尿をためておくことができないので、基本的には尿がたれ流しの状態になります。

手術を行う唯一のメリットとしては、ステージの進行度によっては膀胱全摘出により根治(腫瘍の完全な根絶)の可能性があるということです。しかし、いずれにしても術後の尿のたれ流しによる衛生管理を生涯行う必要があり、抗がん剤治療でも手術と同等の生存期間が得られているため、手術は決して第一選択の治療とはいえません

しかし、最終的に抗がん剤治療でも腫瘍が制御できなくなった場合、最も問題となるのが排尿困難です。特に、尿管が開口する膀胱三角という場所に腫瘍が発生している場合、尿路閉塞により腎不全を起こし致命的となります。その場合、命をつなぎとめるために緊急的におなかなどに尿道を開口させる尿路変更などの救済的手術を行うことがあります。

 

猫の乳腺腫瘍

2019年09月21日|

【猫の乳腺腫瘍の特徴】

 猫の乳腺腫瘍は約90%が悪性で、犬と比べて非常に予後が悪く、診断時にリンパ節や肺へ転移していることも少なくなく、根治の難しい悪性腫瘍です。発見から死亡までの期間は平均で10~12か月といわれます。

 

【性別と年齢】

未避妊の高齢(平均10~12歳)のメス猫に多く発生します。まれにオスに発生することもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 【臨床ステージ分類と予後の予測】

猫の乳腺腫瘍では、予後を予測するのにステージ分類がとても重要となります。そこで用いられるのが、世界保健機関(WHO)で定められているTNM分類と、それに基づく臨床ステージ分類です。

  T:腫瘍のひろがり

  N:リンパ節への浸潤状態

  M:遠隔転移の状態

 

<TNM分類>      <臨床ステージ分類>

TNM分類

臨床ステージ分類

 

 

 

 

 

 

 

まとめると、

ステージⅠ:リンパ節転移がなく、腫瘍直径が2cm未満の場合

ステージⅡ:リンパ節転移がなく、腫瘍直径が2~3cmの場合

ステージⅢ:腫瘍直径が3cm未満でも、リンパ節転移が認められた場合

      リンパ節転移の有無に関わらず直径3cmを超えている場合

ステージⅣ:遠隔転移が認められた場合

となります。

 

そして、このステージ分類による予後に関するある報告では、

 

<臨床ステージによる予後予測> 

ステージ分類と予後予測

 

 

 

 

 

 という結果が得られています。

また、腫瘍サイズと生存期間の相関性が確認されており、特に腫瘍直径が3cmを超えてしまっているかどうかが重要となります。

3cmを超えた時点で転移がなかったとしてもステージⅢとなってしまい、根治の確率が低くなってきます。

肺転移などを起こしステージⅣに移行してしまっている場合は、余命は約1カ月となってしまいます。

 

<避妊手術の乳腺腫瘍に対する予防効果>

避妊手術実施時期と予防効果2

 

 

 

 

 

1歳未満での避妊手術による乳がん発症予防効果は約90%とかなり有効です。

大人になるにつれて徐々に予防効果は下がり、2歳を超えると予防効果はほとんどありません

そのため乳腺腫瘍の発生リスクを下げるためには、早期、特に1歳未満での避妊手術を強くおすすめします。

 

【治療】

①外科治療

 猫の乳腺腫瘍に対する治療の第一選択は外科手術です。犬では腫瘍の完全切除が可能ならば部分的な乳腺切除術も考慮されますが、猫では通常、領域リンパ節の切除を含めた片側乳腺の全摘出術が選択されます。両側の乳腺に腫瘍がある場合は片方の乳腺の全摘出術を行った1ヶ月後にもう片方の乳腺全摘出術を行います。(一度にやると術後の皮膚の張りがきつく呼吸困難を起こすため)

また、ステージⅢ以上で根治が難しい場合でも、腫瘍が自壊を起こしてにおいや出血、膿などが出ているときは、転移状況を考慮しつつ緩和的治療としてQOL(生活の質)改善のために腫瘍の部分切除を行う場合もあります。

 

<片側乳腺全摘出術の目的>

片側乳腺全摘出術の一番の目的はあくまで根治をねらうことです。根治的な手術による乳腺の除去は、病変の速やかな除去と、将来的な発生リスクの減少を期待できます。ステージが低いほど、根治の可能性が高くなります。

また、報告により差はあるものの、根治的な手術により無病生存期間や、生存期間の延長が期待できます

腫瘍だけをくり抜いて切除しても腫瘍細胞の取り残しが出る可能性が高く、根治をねらう手術の場合は、片側(あるいは両側)乳腺全摘出術と領域リンパ節の切除が原則となります。

 

<術後の再発率は少なくない… >

実際には、片側乳腺全摘出術を行っても再発することは少なくなく、遠隔転移性の高さも含めると、多くの猫乳腺癌に対しては外科手術単独での根治は難しいといわれています。局所に再発が認められなくても、術後、肺やリンパ節などに遠隔転移が出てくることもあります。

局所に再発が認められた場合、原則的に再手術が推奨されますが、そのときの猫の全身状態や余命を考慮し、本当に再手術が第一選択なのか、飼い主様の希望と合わせて相談しながらその後の治療方針を決めていきます。

 

<避妊手術の同時実施>

避妊手術を同時に実施することで、術後の再発率を低下させたり、生存期間を延ばしたりという報告はありません。性ホルモンとの関連性がある腫瘍なので少し前までは乳腺切除と同時の避妊手術が一般的でしたが、前述した通り2歳を越えてからの避妊手術は乳腺腫瘍の発症を抑える効果はなく、乳腺腫瘍を発症している時点で余命もある程度限られていますし、麻酔時間も延びてしまうため、最近では同時の避妊手術をしない傾向もあります。

 

②化学療法(抗がん剤治療)

ステージⅢ以上、つまり腫瘍直径が3cmを超えている場合や、リンパ節や肺に転移が認められた場合、または術後の病理組織学的検査で悪性度が高かった場合は、外科手術後に補助的化学療法が推奨されます。

 ある報告では、ステージⅢの乳腺腫瘍の猫のグループにおいて、外科手術単独の生存期間中央値が180日であったのに対し、術後にドキソルビシンを投与した群では生存期間中央値が416日であったという報告もあります。

 ドキソルビシンは、基本的には3週間ごとに血管内に投与していきます。

 全く副作用がないわけではありませんし、必ずしも効果が認められるとは限りませんが、術後に化学療法を行うことで生存期間が延び、ステージⅢの猫でも1年以上生きられる可能性もあります。

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