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消化器科

「吐く」

2020年06月18日|,

今回は「吐く」という症状についてくわしくお話します。

吐くという症状は、消化器の病気や全身の様々な異常によって起こります。

犬・猫では日常的によくみられる症状で、飼い主様も気になっている症状だと思います。

「吐く」という症状は大きく、「吐出」「嘔吐」の二つに分けられます。

 


「吐出(としゅつ)」

飲み込んだ食べ物が胃の中に入る前に口から勢いよく吐き出されることを吐出といいます。

食べた直後にみられることが多く、食べ物は未消化で、胃液はほとんど混じっていません。

吐物は食道を通過したままの筒状の形をしていることがよくあります。

 

吐出の原因

多くは食道の様々な機能障害、炎症、異物などによって起こります。

小型犬種では、鋭利に割れた硬めのクッキー、果物やお肉、おやつなどでも、大きさによっては丸呑みすると食道につまったり食道を傷つけ、食道閉塞や食道炎を引き起こし、激しい吐出や飲食ができないことにより、最終的に腎不全や食道狭窄、誤嚥性肺炎により命に関わることもあるので注意が必要です。

 


「嘔吐(おうと)」

胃に入った内容物を口から吐き出すことを嘔吐といいます。

吐く前に、元気消失、震え、口をなめ回したり、よだれを垂らすなどの吐き気の前兆がよくみられます。

また、吐くときに腹部の筋肉が収縮し、おなかを上下させるように胃から内容物を逆流させる蠕動(ぜんどう)運動がみられることが多いです。

嘔吐の原因

食道や胃腸の閉塞・圧迫、炎症、異物誤飲、腫瘍、空腹時胃酸過多、細菌・ウイルス・寄生虫などによる全身性感染症、毛球症など様々な原因が考えられます。

 

猫の毛球症

猫は毛の生えかわる換毛期に頻繁にグルーミングをし、大量の毛を飲み込み、胃の中で毛玉となり、それが胃の出口につまると胃の内容物と一緒に毛玉を吐くことがよくありますが、これは病気ではありません。

ブラッシングをこまめにしてあげたり、毛玉を便に出しやすくするサプリメントもありますので、気になっている方はお気軽にご相談下さい。

 

胃運動障害(胃アトニー)

胃の運動性低下による胃内容物の十二指腸への排出遅延のことをいいます。

簡単にいうと、胃から腸へと食べ物を送る能力が低下しているということです。

異物などによる物理的閉塞がないにも関わらず、食後数時間以上経過してから食べたものを嘔吐する場合、胃運動障害(胃アトニー)の可能性もあります。

勢いよく食べてから三十分以内に吐くこともよくあり、比較的猫で多くみられます。

胃ぐすりや消化管機能改善薬などの投薬や食事療法により、症状が改善することが多いです。

 


吐出、嘔吐を起こす原因リスト(多い順)

普段、僕が診療していて吐出、嘔吐の原因リストとしてみかけることの多いイメージのある順に並べてみました。下の方に行くほどまれです。犬・猫共通です。

 

★「吐出」の原因リスト(多い順)★

 一気食いによる食道容積オーバーによる吐出

 食道内異物(超小型犬では食べ物による閉塞も含む)

 食道炎

 食道拡張症(巨大食道症)

 食道狭窄

 誤嚥性肺炎

 食道裂孔ヘルニア

 胃の噴門(胃の入り口)狭窄

 先天性右大動脈弓遺残症

 

★「嘔吐」の原因リスト(多い順)★

 空腹時胃酸過多

 胃潰瘍

 毛球症(猫)

 乗り物酔い

 急性・慢性胃炎

 胃運動障害・胃アトニー(特に猫)

 異物による消化管閉塞(胃・腸閉塞)

 急性膵炎

 食物不耐性

 胆管炎(猫)

 尿路閉塞による急性腎不全(特にオス猫、オス犬)

 胆嚢炎・胆嚢破裂、胆管閉塞

 中毒

 消化管内寄生虫(特に子犬、子猫、野良猫)

 猫の巨大結腸症、便秘

 炎症性腸疾患

 糖尿病性ケトアシドーシス

 高齢犬の突発性眼振(目まい)による悪心

 腫瘍(中高齢での胃・小腸のがん、ダックスではまれに若齢でも発生)

 腸重積

 アジソン病(副腎皮質機能低下症)

 肝疾患

 肥満細胞腫(皮膚発生例でも、腫瘍随伴症候群による高ヒスタミン血症により嘔吐)

 胃の幽門(胃の出口)狭窄

 敗血症(全身性細菌感染症)

 腎炎

 パルボウイルス感染症

 レプトスピラ感染症

 その他

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