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ケンネルコフ

ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)

2019年10月18日|

概要

まだ免疫力の十分でない子犬が発症することの多い、咳を主症状とした感染性の気管および気管支炎のことです。

 

病原体

イヌアデノウイルス2型、

犬パラインフルエンザウイルス、

犬ヘルペスウイルス、

Bordetella bronchiseptica(気管支敗血症菌)、

マイコプラズマ

などの病原体の単独あるいは複合感染によって起こります。

Bordetella bronchiseptica(気管支敗血症菌)がネコに感染することはまれで、ケンネルコフといえば、一般的には子犬が罹患する伝染性の喉頭気管炎を指します。

 

症状

軽度のケンネルコフでは、短くて乾いた咳が特徴的で、3~10日間の潜伏期間の後に発症します。

気管を触診することによって咳が容易に誘発されます(コフテスト陽性)。

また、運動、興奮、首輪の圧迫などによっても咳が出やすくなります。

食欲・元気は通常ありますが、病原体の混合感染により子犬はより重度の呼吸器症状(痰(たん)を伴う咳、鼻汁排出など)を呈し、発熱や元気消失などの全身症状が出るようになり重症化すると、肺炎などにより死亡する危険性もあります。

 

細菌性肺炎の危険性

犬では、二次的な細菌性肺炎が発症することがあります。すでに慢性気道疾患または気管虚脱が認められている犬では、それらの慢性疾患が急性かつ重度に悪化する場合があり、動物におけるこの感染症に関連した症状が治癒するためには、長期間治療することが必要である。

 

感染ルート

多くの場合、ペットショップから購入したばかり、ブリーダーや動物愛護団体から譲渡されたばかりのことが多く、それ以外にも2週間以内にどこかに出かけたり、他の子犬や同様の症状を示す犬と接触したという経歴があることが多いです。

通常、感染後1週間以内に発症します。

 

診断

確定診断は多くの場合は困難で、

・年齢(若齢)

・ワクチン接種歴の有無(まだワクチンを打ったことがない)

・入手経路(つい最近まで多頭飼育施設にいた)

・感染犬との接触の有無

などを考慮したうえで臨床徴候から推測することで暫定的にケンネルコフと診断することがほとんどです。

X線検査では通常、正常あるいは軽度の気管支パターンといわれる所見がみられるのみで、診断の一助になることはあってもX線写真だけでケンネルコフとの確定診断はくだせません。

血液検査の数値はほぼ正常です。

 

治療

合併症のないケンネルコフは、時間が経てば自然治癒することが多いです。過度の咳によって起こる気道の継続的な刺激を最低限にするために、少なくとも7日間の安静、特に運動と興奮を避けることが必要です。

軽症の場合、薬物投与は必要なく、適度な温度と湿度の環境下で安静にすれば、7~10日以内に自然治癒するといわれています。

しかし、細菌性肺炎への重篤化を避けるため、慎重を期する、あるいは治療の必要ありと判断した場合には 抗菌薬気管支拡張薬 を使用します

また咳が持続性あるいは顕著であれば 鎮咳剤 も使用することもありますが、鎮咳剤は、咳が湿性の場合、聴診または胸部X線写真で肺に液体が貯留していることが疑われるような場合は投与すべきではありません。

噴霧療法(ネブライジング)も有効です。(抗生物質や気管支拡張剤などを気体状にし吸入させることで、直接、気管や気管支などの患部に薬剤を浸透させる治療です。)

投薬を行った場合、通常1週間以内に症状の改善が認められますが、治療は約2週間続けるべきといわれています。

 

■抗菌薬

広域スペクトル(多くの病原体に広く浅く効く)のものを選択します。

テトラサイクリン、マクロライド系、ペニシリン、セファロスポリン、クロラムフェニコールなどが有効です。抗菌薬は臨床徴候が消失してからさらに5日間、または少なくとも14日間投与します。

 

ステロイドは使用しません。Thrusfieldによる臨床試験では、単剤または抗菌薬との併用のどちらでも、ステロイド治療の利点を見出せなかったとの報告があります。

 

■気管支拡張薬

交感神経作動薬であるテルブタリンや、キサンチン系気管支拡張剤であるアミノフィリンやテオフィリンが使用されます。

後者のキサンチン系気管支拡張剤は、気管支拡張作用のほか、気道クリアランス(気道の粘膜にもともと備わっている、分泌物・異物・病原体などを口の方に運ぶはたらき)の改善抗炎症効果などがあります。

■鎮咳剤 

ブトルファノールが最も効果的で、その他デキストロメトルファン、コデインなどがありますが、使用頻度は高くありません。

 

予後

肺炎などの合併症がなければ良好です。

 

予防

混合ワクチンの接種と、動物の細菌への暴露を最小限にすることによって予防できることが多いですが、

たとえワクチンを打っていたとしても、注射型ワクチンの気道粘膜面における有効性は必ずしも確実ではないともいわれていますので、100%予防できるわけではありません。

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