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猫免疫不全ウイルス感染症(FIV;猫エイズウイルス感染症)

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV;猫エイズウイルス感染症)

2021年01月11日|,

概要

猫免疫不全ウイルス(FIV)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)と近縁のウイルスです。FIVは人に感染することはありません。

FIVは一度猫に感染すると、終生体内から消失することはありません

FIV感染猫は、慢性的な口内炎・歯肉炎慢性鼻炎、リンパ節症、体重減少などの症状を示すことが少なくありませんが、中にはウイルスに感染しても数年間何の症状もみられない場合や、発症しない猫もいます。

FIVに感染した猫でも、適切に健康管理してあげることで非感染猫と同様に長生きすることも可能です。

 


感染経路

FIVは、感染猫の唾液、血液、乳汁、精液などに存在します。ほとんどの場合、猫同士のケンカなどによる咬傷により感染します。咬傷にはオス猫との交尾中の咬傷感染も含まれます。

感染猫との食器の共有などによる経口感染もあり得ますが、FIVウイルスは猫の体から離れると乾燥などにより容易に失活するため、感染猫が食べた食器をすぐに他の猫が舐めるといった行為を日常的に行わない限り、すぐに感染するわけではありません。

また、まれですが妊娠・授乳中の経乳感染や胎盤感染もあり得ます。特に母猫が急性感染している場合はウイルス量が多い状態のため、垂直伝播が起こる可能性があります。

 


FIVによる病期

FIVは、①急性期(AP)、②無症候キャリア期(AC)、③持続性全身性リンパ節症期(PGL)、④エイズ関連症候群期(ARC)、⑤後天性免疫不全症候群期(AIDS)の5つの病期に分けられます。

①急性期(AP)

感染から8~12週間で血中ウイルス量がピークに達します。この期間中に一時的に食欲不振、沈うつ、発熱、白血球減少、貧血、下痢などの症状がみられることがありますが、その後は正常に戻ります。しかし、全身のリンパ節腫大(リンパ節症)は数週~数カ月の間、持続する場合があります。

②無症候キャリア期(AC)

AC期では血中ウイルス量の減少がみられます。この時期は免疫によってウイルスの増殖がコントロールされるため、症状はありません。AC期は数年~生涯において持続すると考えられます。中にはFIVに関連した症状を何も示さず寿命を全うする猫もいます

③持続性全身性リンパ節症期(PGL)

この時期があまり明確にわからないこともありますが、全身のリンパ節腫大が認められます。数カ月~1年ほど持続するといわれています。

④エイズ関連症候群期(ARC)

この時期には免疫異常に伴う症状が現れ、口内炎・歯肉炎、上部気道炎、消化器症状、皮膚病変などがみられることがあります。数カ月~数年程度持続するといわれています。

⑤後天性免疫不全症候群期(AIDS)

FIV感染症の末期で、免疫不全による症状として、各種の日和見感染、貧血、腫瘍、重度の体重減少や衰弱などがみられます。

 


検査

FIVの診断には血液中の抗FIV抗体を検出する院内検査キットが普及しています。少量の血液を採血し、検査キットにかけることで10分ほどで結果が出ます。

*抗体検査の注意点*

①猫がウイルスに暴露され感染が成立してから抗体が産生されるまでには約1~2カ月かかります。そのため、感染猫に咬まれてすぐに検査しても偽陰性となってしまいますので、感染の可能性がある猫ではできれば受傷後2カ月程度の期間をあけて検査を行う必要があります。

幼猫のウイルス検査でFIV陽性の判定が出た場合、母猫がFIVに感染していると、生後12週齢程度まではその母猫からの移行抗体の残存による抗FIV抗体を拾っている可能性があります。そのため、6カ月齢以上で再度検査を行い、陰性に変わっていれば移行抗体の影響(本人は感染していない)、陽性であれば本当にその猫がFIVに感染している可能性が考えられます。

③FIVワクチンを接種した猫では、当然ながら抗FIV抗体が産生されるので、検査キットでも陽性となります。そのため、FIVワクチンを接種する前に事前にウイルス検査を行っておく必要があります。

 


治療

①抗ウイルス療法

原因治療(抗ウイルス療法)については様々な研究が行われているが、FIV感染症に関しては積極的に臨床応用されていないのが現状である。これまでに報告されているFIV感染症に対して有効であると思われる抗ウイルス薬の多くは逆転写酵素阻害剤であり、作用機序はウイルス複製の初期の過程を阻害することにある。ジドブジン(アジドチミジン、AZT)が用いられることもあるが、骨髄抑制がみられることがあるため注意が必要である。(当院ではまだ使用したことはありません。)また、インターフェロンω(インターキャット)の投与により、生存期間の延長がみられたとの報告もありますが、その作用機序は不明であり、確立された治療とはいえません。

②対症療法

口内炎や歯肉炎に対しては、抗炎症効果を目的としたステロイドの使用と二次感染防止のための抗菌薬の投与などを行います。それ以外も、それぞれの症状や原因に応じて、対症療法を行います。

 


FIV感染猫の管理

・FIVに感染している猫では他の感染症に罹患しやすくなっているため、屋外へ出さないようにしましょう。

・他の健康な猫へFIVを広めないようにするため、感染猫は隔離して飼育することが推奨されます。

・未去勢・未避妊のFIV感染猫には不妊手術を行うことが望まれます。

・感染猫は6カ月ごとに健康診断を行い、体重減少がないかチェックしましょう。血液検査や尿検査なども定期的に行うことが推奨されます。

 


FIVワクチン

子猫では8週齢以降で初回接種し、2~3週間ごとに計3回接種します。その後は1年に1回の追加接種を行います。成猫に関しても同様のプログラムで接種します。

 


予防

・FIVへの接触を防ぐ。FIVの伝播力はさほど強くありませんので、猫同士のけんかに巻き込まれることがなければ感染するリスクは低いといえます。

・猫を室内で飼育すること、新しい猫を導入するときには感染の有無を確認すること、また感染リスクのある猫では再度感染の有無を確認することが重要です。

・屋内飼育や、野良猫との接触をなくすために避妊・去勢手術を行うのも有効かもしれません。

 


消毒

FIVウイルスは猫の体を離れると失活します。石けん、各種消毒薬、熱、乾燥などにより容易に感染性を失います。

 

 

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