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動物の病気について

猫のトリコモナス症

2021年01月16日|,

概要

猫のトリコモナス症は、Tritrichomonas suis(=Tritrichomonas foetus、トリコモナス・フィータス)といわれる原虫が小腸や大腸に寄生し、慢性の下痢を引き起こす感染症です。主に1歳齢以下の子猫で発症し、成猫でも不顕性(下痢を起こさず)に感染していることがあります。

 


病原体

 

 


感染経路

トリコモナスは猫の小腸(回腸)、大腸(盲腸・結腸)で増殖し、一部が糞便中に排出されます。猫の体内を離れても、条件が整っていると5日間ほど生存しており、この間に他の猫の体表に付着し、グルーミングの際に経口感染すると考えられています。

若齢時に多頭飼育を行っている環境下で感染し、2カ月~2年で自然に治癒することもありますが、その後、キャリア(=症状はないが、病原体を排出し続ける)となってその環境下での感染源となってしまう猫もいます。

 


糞便検査

成猫でもトリコモナスが認められることがありますが、圧倒的に1歳齢以下の子猫から検出されることがほとんどです。雑種猫より純血種の感染率が高いとの報告もあり、生まれた時から外に出たことがなくても感染していることは十分あり得ます。

 


症状

主に若齢猫に、慢性の大腸性下痢を引き起こし、下痢になったり治ったりを繰り返します。無症状、排便回数の増加、軟便、下痢など様々です。しばしば悪臭のある下痢便で、ときおり粘液鮮血が混じります。

 


治療

現在、トリコモナス原虫に対する有効な薬剤はロニダゾールのみといわれており、一般的な抗原虫薬であるメトロニダゾール(商品名:フラジール)は無効とされています。しかし、メトロニダゾールの投薬により下痢の症状が軽減することも少なくはありません。

ロニダゾールは国内では認可されておらず、海外からの輸入が必要なため入手がやや困難なことと、副作用として神経毒の報告もあるため、投薬の際には猫を注意深く観察する必要があります。ロニダゾールを処方する場合、鳥の       粉剤しかありません。投薬期間は2週間ですが、1回の粉の量がかなり多いため、猫への投薬は実際にはかなり大変だと思われます。ロニダゾール投薬後も下痢が再発することもあります。

 


予防

若齢時に繁殖施設や保護施設などの多頭飼育環境下で感染し、無症状の猫もキャリアとなって伝播することが考えられるため、若齢時から完全に個別飼いすることによって予防が可能ですが、譲り受けた際にはすでに感染していることも少なくありません。

 

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

2021年01月12日|,

概要

主に感染猫の唾液を介して猫同士で伝播する感染症で、ウイルスに感染後、ウイルスを体内から排除できずに持続性ウイルス血症となった感染猫は、リンパ腫や白血病などをはじめとした様々な疾患を発症することがあり、その多くが致死的な経過をたどる予後不良の感染症です。


感染経路

ウイルスは感染猫の唾液、糞便、尿、鼻汁中に存在するウイルスによって伝播します。特に猫同士のケンカによる咬傷や舐め合いによって感染することがほとんどで、主に唾液を介して感染します。経乳感染・胎盤感染、食事や食器の共有による感染もあり得ます。また、生後FeLV抗原陽性の母猫が子猫を舐めることによっても高率にウイルスが伝播します。

 


感染タイプ

感染タイプは大きく3つに分けられ、それにより予後が大きく異なりますが、どのタイプで感染するかはそれぞれの猫の免疫能によると考えられます。

ざっくりとした傾向としては、子猫のうちに感染した場合は持続感染となり予後不良、成猫になってから感染した場合は一過性感染、潜伏感染となり予後良好の傾向があります。

①持続性ウイルス血症(持続感染猫)

生後4カ月以内に感染すると、高率に持続性ウイルス血症を起こし、持続感染猫となります。成猫でも様々な要因によって免疫能が低下している時に感染した場合、持続感染が成立することもあります。

持続性ウイルス血症となった感染猫は、FeLVに関連した様々な疾患を発症することがあります。

ある報告では6週齢以下の子猫で70~100%、8~12週齢では30~50%、1歳以上では10~20%の猫が持続感染猫になるとの報告があります。

一過性感染(体内からのウイルス排除)

 感染初期に有効な免疫応答が体内ではたらいた場合には、ウイルスを体内から完全に排除することができます。その結果、ウイルス検査では陰転し、FeLV関連の疾患の発症は認められず、新たなFeLVの暴露に対しても抵抗性(感染しにくくなる)を獲得します。

一過性のウイルス血症は1~16週間続き、16週間以上ウイルス血症がみられる猫は持続感染と考えられます。

③潜伏感染

持続感染成立の場合と同様に骨髄までの感染が成立した後、ある程度の免疫応答によってウイルスが排除され、検査は陰転しますが、ウイルスは骨髄やリンパ節の染色体にプロウイルスとして組み込まれ潜伏感染しています。

その後、潜伏感染のままでいることもありますが、免疫応答が優勢になった場合にはウイルスを完全に排除することもあり、一方、出産などのストレスやストロイド剤の投与などによってFeLVの増殖が活発化し、持続感染となってしまうこともあります。

 


症状

FeLVが感染した初期には、発熱や白血球減少症などの骨髄抑制が認められることがあります。この症状は1週間程度とされていますが、輸液療法や抗菌薬投与といった対症療法のみで軽快することも多くウイルス感染も成立しないこともあります。

しかしその後、持続性ウイルス血症となってしまった場合、どのような病気や疾患を引き起こすかを予測することはできません。しかし、最も認められる症状は造血器系腫瘍、免疫抑制、貧血です。また、持続性ウイルス血症であっても発症せずに無症候キャリアのままでいる場合もあります。

造血器系腫瘍

FeLVによって引き起こされる造血器系腫瘍のうち、最も代表的なものがリンパ腫です。

前縦隔型リンパ腫はリンパ腫のうち最も頻度が高く、胸腔内で心臓の前部(頭側)のリンパ節が腫瘍化して巨大になり、心臓や肺を重度に圧迫し、呼吸困難や胸水貯留などを引き起こします。生後間もない子猫のうちに感染して持続性ウイルス血症になった猫は1~2歳前後で発症することも少なくありません。

免疫抑制

免疫抑制の状態になると、他の病原体に感染する可能性があります。慢性口内炎慢性鼻炎を起こすこともあります。

貧血

FeLVによる貧血は、ほとんどの場合がウイルスによる骨髄抑制効果によって引き起こされる非再生性貧血(再生不良性貧血)で、治療への反応は乏しく予後不良です。まれ(約10%)に治療に反応を示す再生性の貧血が認められることもあります。

FeLVに関連した貧血として、猫ヘモプラズマ症という感染性の再生性貧血や、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)を起こすこともあります。

 


検査

FeLVの診断には血液中のFeLV抗原を検出する院内検査キットが普及しています。少量の血液を採血し、検査キットにかけることで10分ほどで結果が出ます。

*抗原検査の注意点*

①咬傷などによる感染初期(4~6週間)ではウイルス抗原が検出されないため、感染猫に咬まれてすぐに検査しても偽陰性となってしまいますので、感染の可能性がある猫ではできれば受傷後2カ月程度(FIVの同時感染の可能性もあるため)の期間をあけて検査を行う必要があります。

FeLV陽性の判定が出た場合、予後の予測のためにも16週間(約4カ月)後に再検査を行い、持続性ウイルス血症なのかどうかを確認することが望まれます。

 


治療

①抗ウイルス療法

インターフェロンω(インターキャット)の投与によって症状の改善が認められるとの報告があるが、効果は確実とは言えません。

②対症療法

FeLVによる何らかの疾患を伴う場合は、それぞれの疾患に対しての対症療法を行います。

例えば代表的なものとして、前縦隔型リンパ腫を呈した感染猫には多剤併用による抗癌剤治療を考慮します。抗癌剤の投与により腫瘍が縮小し、呼吸状態がかなり改善することも少なくありませんが、効果は永久的ではなく、いつか必ず再発はします。当院では半年間の抗癌剤治療を行い、その後数年再発しなかった例もありますが、数カ月後にすぐに再発した例もあり、再発までの期間は個体差によります。

慢性口内炎を示す感染猫には、抗炎症作用や食欲増進を期待してステロイドの投与や、二次感染防止として抗菌薬の投与などを検討します。

 


FeLV感染猫の管理

・多頭飼育をしている場合、できれば全頭のウイルス検査を行い、陽性猫と陰性猫を別々に隔離して飼育することが好ましいです。ウイルス血症が認められた猫(陽性猫)が、陰転(再検査で陽性から陰性に変わった)した場合は、ウイルスは骨髄やリンパ節の染色体にプロウイルスとして潜伏感染して存在しています。すなわちウイルスが完全に猫体内から排除されたとは考えません。この潜伏感染している猫の血液を輸血すると、輸血された猫ではウイルス血症となります。潜伏しているウイルスは再活性することがあるため、陰転した感染猫が多頭飼育環境やストレス、何らかの疾患によってFeLVを産生するようになるかもしれません。したがって、陰転した感染猫も非感染猫と一緒に飼育すると、いつのまにか陰転猫が陽性猫となり、ウイルスを蔓延させてしまう危険性があります。

・FeLVに感染している猫では他の感染症に罹患しやすくなっているため、屋外へ出さないようにしましょう。

・感染猫は定期的に健康診断を行い、体調をチェックしましょう。

 


FeLVワクチン(5種混合ワクチンに含まれる)

FeLV陰性の猫を完全室内で飼育している場合はFeLVに感染することはありません。屋外に出ることがある場合は、ウイルス暴露を受ける可能性があるので5種混合ワクチンを検討します。ただしワクチン接種によってウイルス感染を完全に防げるわけではありません。ワクチン接種を行う場合はウイルス検査によりFeLV感染の有無を確認し、FeLV感染が認められる場合はFeLV感染防御を目的としたワクチンは接種しません。

すでにウイルス血症になっている猫にワクチンを接種しても発症を抑制したり、生存期間を延長するなどのメリットはありません。

 


消毒

ウイルスは猫の体内から離れるとすぐに失活します。石けん、消毒薬、熱、乾燥などにより容易に感染性を失います。

 

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV;猫エイズウイルス感染症)

2021年01月11日|,

概要

猫免疫不全ウイルス(FIV)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)と近縁のウイルスです。FIVは人に感染することはありません。

FIVは一度猫に感染すると、終生体内から消失することはありません

FIV感染猫は、慢性的な口内炎・歯肉炎慢性鼻炎、リンパ節症、体重減少などの症状を示すことが少なくありませんが、中にはウイルスに感染しても数年間何の症状もみられない場合や、発症しない猫もいます。

FIVに感染した猫でも、適切に健康管理してあげることで非感染猫と同様に長生きすることも可能です。

 


感染経路

FIVは、感染猫の唾液、血液、乳汁、精液などに存在します。ほとんどの場合、猫同士のケンカなどによる咬傷により感染します。咬傷にはオス猫との交尾中の咬傷感染も含まれます。

感染猫との食器の共有などによる経口感染もあり得ますが、FIVウイルスは猫の体から離れると乾燥などにより容易に失活するため、感染猫が食べた食器をすぐに他の猫が舐めるといった行為を日常的に行わない限り、すぐに感染するわけではありません。

また、まれですが妊娠・授乳中の経乳感染や胎盤感染もあり得ます。特に母猫が急性感染している場合はウイルス量が多い状態のため、垂直伝播が起こる可能性があります。

 


FIVによる病期

FIVは、①急性期(AP)、②無症候キャリア期(AC)、③持続性全身性リンパ節症期(PGL)、④エイズ関連症候群期(ARC)、⑤後天性免疫不全症候群期(AIDS)の5つの病期に分けられます。

①急性期(AP)

感染から8~12週間で血中ウイルス量がピークに達します。この期間中に一時的に食欲不振、沈うつ、発熱、白血球減少、貧血、下痢などの症状がみられることがありますが、その後は正常に戻ります。しかし、全身のリンパ節腫大(リンパ節症)は数週~数カ月の間、持続する場合があります。

②無症候キャリア期(AC)

AC期では血中ウイルス量の減少がみられます。この時期は免疫によってウイルスの増殖がコントロールされるため、症状はありません。AC期は数年~生涯において持続すると考えられます。中にはFIVに関連した症状を何も示さず寿命を全うする猫もいます

③持続性全身性リンパ節症期(PGL)

この時期があまり明確にわからないこともありますが、全身のリンパ節腫大が認められます。数カ月~1年ほど持続するといわれています。

④エイズ関連症候群期(ARC)

この時期には免疫異常に伴う症状が現れ、口内炎・歯肉炎、上部気道炎、消化器症状、皮膚病変などがみられることがあります。数カ月~数年程度持続するといわれています。

⑤後天性免疫不全症候群期(AIDS)

FIV感染症の末期で、免疫不全による症状として、各種の日和見感染、貧血、腫瘍、重度の体重減少や衰弱などがみられます。

 


検査

FIVの診断には血液中の抗FIV抗体を検出する院内検査キットが普及しています。少量の血液を採血し、検査キットにかけることで10分ほどで結果が出ます。

*抗体検査の注意点*

①猫がウイルスに暴露され感染が成立してから抗体が産生されるまでには約1~2カ月かかります。そのため、感染猫に咬まれてすぐに検査しても偽陰性となってしまいますので、感染の可能性がある猫ではできれば受傷後2カ月程度の期間をあけて検査を行う必要があります。

幼猫のウイルス検査でFIV陽性の判定が出た場合、母猫がFIVに感染していると、生後12週齢程度まではその母猫からの移行抗体の残存による抗FIV抗体を拾っている可能性があります。そのため、6カ月齢以上で再度検査を行い、陰性に変わっていれば移行抗体の影響(本人は感染していない)、陽性であれば本当にその猫がFIVに感染している可能性が考えられます。

③FIVワクチンを接種した猫では、当然ながら抗FIV抗体が産生されるので、検査キットでも陽性となります。そのため、FIVワクチンを接種する前に事前にウイルス検査を行っておく必要があります。

 


治療

①抗ウイルス療法

原因治療(抗ウイルス療法)については様々な研究が行われているが、FIV感染症に関しては積極的に臨床応用されていないのが現状である。これまでに報告されているFIV感染症に対して有効であると思われる抗ウイルス薬の多くは逆転写酵素阻害剤であり、作用機序はウイルス複製の初期の過程を阻害することにある。ジドブジン(アジドチミジン、AZT)が用いられることもあるが、骨髄抑制がみられることがあるため注意が必要である。(当院ではまだ使用したことはありません。)また、インターフェロンω(インターキャット)の投与により、生存期間の延長がみられたとの報告もありますが、その作用機序は不明であり、確立された治療とはいえません。

②対症療法

口内炎や歯肉炎に対しては、抗炎症効果を目的としたステロイドの使用と二次感染防止のための抗菌薬の投与などを行います。それ以外も、それぞれの症状や原因に応じて、対症療法を行います。

 


FIV感染猫の管理

・FIVに感染している猫では他の感染症に罹患しやすくなっているため、屋外へ出さないようにしましょう。

・他の健康な猫へFIVを広めないようにするため、感染猫は隔離して飼育することが推奨されます。

・未去勢・未避妊のFIV感染猫には不妊手術を行うことが望まれます。

・感染猫は6カ月ごとに健康診断を行い、体重減少がないかチェックしましょう。血液検査や尿検査なども定期的に行うことが推奨されます。

 


FIVワクチン

子猫では8週齢以降で初回接種し、2~3週間ごとに計3回接種します。その後は1年に1回の追加接種を行います。成猫に関しても同様のプログラムで接種します。

 


予防

・FIVへの接触を防ぐ。FIVの伝播力はさほど強くありませんので、猫同士のけんかに巻き込まれることがなければ感染するリスクは低いといえます。

・猫を室内で飼育すること、新しい猫を導入するときには感染の有無を確認すること、また感染リスクのある猫では再度感染の有無を確認することが重要です。

・屋内飼育や、野良猫との接触をなくすために避妊・去勢手術を行うのも有効かもしれません。

 


消毒

FIVウイルスは猫の体を離れると失活します。石けん、各種消毒薬、熱、乾燥などにより容易に感染性を失います。

 

 

「吐く」

2020年06月18日|,

今回は「吐く」という症状についてくわしくお話します。

吐くという症状は、消化器の病気や全身の様々な異常によって起こります。

犬・猫では日常的によくみられる症状で、飼い主様も気になっている症状だと思います。

「吐く」という症状は大きく、「吐出」「嘔吐」の二つに分けられます。

 


「吐出(としゅつ)」

飲み込んだ食べ物が胃の中に入る前に口から勢いよく吐き出されることを吐出といいます。

食べた直後にみられることが多く、食べ物は未消化で、胃液はほとんど混じっていません。

吐物は食道を通過したままの筒状の形をしていることがよくあります。

 

吐出の原因

多くは食道の様々な機能障害、炎症、異物などによって起こります。

小型犬種では、鋭利に割れた硬めのクッキー、果物やお肉、おやつなどでも、大きさによっては丸呑みすると食道につまったり食道を傷つけ、食道閉塞や食道炎を引き起こし、激しい吐出や飲食ができないことにより、最終的に腎不全や食道狭窄、誤嚥性肺炎により命に関わることもあるので注意が必要です。

 


「嘔吐(おうと)」

胃に入った内容物を口から吐き出すことを嘔吐といいます。

吐く前に、元気消失、震え、口をなめ回したり、よだれを垂らすなどの吐き気の前兆がよくみられます。

また、吐くときに腹部の筋肉が収縮し、おなかを上下させるように胃から内容物を逆流させる蠕動(ぜんどう)運動がみられることが多いです。

嘔吐の原因

食道や胃腸の閉塞・圧迫、炎症、異物誤飲、腫瘍、空腹時胃酸過多、細菌・ウイルス・寄生虫などによる全身性感染症、毛球症など様々な原因が考えられます。

 

猫の毛球症

猫は毛の生えかわる換毛期に頻繁にグルーミングをし、大量の毛を飲み込み、胃の中で毛玉となり、それが胃の出口につまると胃の内容物と一緒に毛玉を吐くことがよくありますが、これは病気ではありません。

ブラッシングをこまめにしてあげたり、毛玉を便に出しやすくするサプリメントもありますので、気になっている方はお気軽にご相談下さい。

 

胃運動障害(胃アトニー)

胃の運動性低下による胃内容物の十二指腸への排出遅延のことをいいます。

簡単にいうと、胃から腸へと食べ物を送る能力が低下しているということです。

異物などによる物理的閉塞がないにも関わらず、食後数時間以上経過してから食べたものを嘔吐する場合、胃運動障害(胃アトニー)の可能性もあります。

勢いよく食べてから三十分以内に吐くこともよくあり、比較的猫で多くみられます。

胃ぐすりや消化管機能改善薬などの投薬や食事療法により、症状が改善することが多いです。

 


吐出、嘔吐を起こす原因リスト(多い順)

普段、僕が診療していて吐出、嘔吐の原因リストとしてみかけることの多いイメージのある順に並べてみました。下の方に行くほどまれです。犬・猫共通です。

 

★「吐出」の原因リスト(多い順)★

 一気食いによる食道容積オーバーによる吐出

 食道内異物(超小型犬では食べ物による閉塞も含む)

 食道炎

 食道拡張症(巨大食道症)

 食道狭窄

 誤嚥性肺炎

 食道裂孔ヘルニア

 胃の噴門(胃の入り口)狭窄

 先天性右大動脈弓遺残症

 

★「嘔吐」の原因リスト(多い順)★

 空腹時胃酸過多

 胃潰瘍

 毛球症(猫)

 乗り物酔い

 急性・慢性胃炎

 胃運動障害・胃アトニー(特に猫)

 異物による消化管閉塞(胃・腸閉塞)

 急性膵炎

 食物不耐性

 胆管炎(猫)

 尿路閉塞による急性腎不全(特にオス猫、オス犬)

 胆嚢炎・胆嚢破裂、胆管閉塞

 中毒

 消化管内寄生虫(特に子犬、子猫、野良猫)

 猫の巨大結腸症、便秘

 炎症性腸疾患

 糖尿病性ケトアシドーシス

 高齢犬の突発性眼振(目まい)による悪心

 腫瘍(中高齢での胃・小腸のがん、ダックスではまれに若齢でも発生)

 腸重積

 アジソン病(副腎皮質機能低下症)

 肝疾患

 肥満細胞腫(皮膚発生例でも、腫瘍随伴症候群による高ヒスタミン血症により嘔吐)

 胃の幽門(胃の出口)狭窄

 敗血症(全身性細菌感染症)

 腎炎

 パルボウイルス感染症

 レプトスピラ感染症

 その他

膀胱炎(犬・猫共通)

2020年05月24日|,

膀胱炎の概要

膀胱炎とは、膀胱に炎症が起こり、尿をためたり、排尿したりといった膀胱の機能に支障が生じる疾患です。急に発症する場合を急性膀胱炎、経過が長い場合を慢性膀胱炎といいます。

 


原因

膀胱炎は、便の中、陰部(メス)、陰茎(オス)周囲の皮膚などに存在する細菌が尿道内に入り込み、そのまま尿道をつたって逆流性に膀胱内に浸入・感染することで発症する細菌性膀胱炎が最も一般的です。

また、遺伝的要因、偏った食生活などによって膀胱内に結石ができてしまうと、石が膀胱粘膜を慢性的に刺激することで慢性膀胱炎を起こすこともあります。

猫ではストレスが要因となった特発性膀胱炎も一般的によくみられます。ストレスの代表的な原因としては、環境の変化や、新しく迎え入れた猫との折り合いが悪い、などが挙げられます。

 

膀胱炎の原因を、犬・猫に分けて、もう少し具体的にみていきますと、

では急性膀胱炎が多く、そのほとんどが細菌感染が原因です。尿道が細くて長いオス犬よりも、尿道が太くて短いメス犬の方が細菌感染を起こしやすいです。原因となる細菌は、便中に含まれる大腸菌がほとんどです。

再発を繰り返す慢性膀胱炎では、耐性菌といって抗生物質に抵抗力をもつ細菌が増殖しているか、すでに膀胱内に結石ができておりそれが慢性的に膀胱粘膜を刺激することで再発を繰り返すことがあります。去勢手術を行っていない高齢のオス犬では、前立腺疾患が原因となって細菌性膀胱炎を起こすことも比較的よくみられます。

では10歳未満の猫では特発性膀胱炎が最も多く、10歳以上の高齢猫では尿路結石や慢性腎臓病が基礎疾患となった細菌性膀胱炎が多くなります。

また、犬・猫に共通して、交通事故などによって下半身麻痺になってしまった場合は、陰部が地面に接することが多くなるため、常に細菌感染を起こしやすくなり、慢性細菌性膀胱炎を起こすことがあります。

 


症状

膀胱炎を起こすと、血尿(尿に血が混じる)、頻尿(何度も排尿姿勢をする)、残尿感(尿が出ないのにいつまでも排尿姿勢を続ける)、排尿時の痛み、においの強い尿、尿漏れなどの症状が見られるようになります。

通常、膀胱炎だけでは発熱、元気消失、食欲不振、嘔吐などの症状は認められません。このような症状も一緒に認められる場合は、腎盂腎炎、前立腺膿瘍などの併発疾患も考慮する必要があります。

 


診断

①尿検査

 膀胱炎が疑われる場合には必須の検査となります。色調、におい、尿pH(酸性尿か、アルカリ尿か)、出血の有無、細菌感染の有無、尿比重、尿糖の有無などを調べます。

②超音波検査(エコー)

 膀胱内の状態を画像で直接把握するのに最適な検査です。動物への負担もなく調べることができます。膀胱内の濁り、膀胱粘膜の厚みの評価、膀胱粘膜の凹凸・膀胱結石・膀胱内腫瘍の有無などを目で見て調べることができます。

③X線検査(レントゲン)

 急性膀胱炎の場合は必ずしもレントゲンは撮りませんが、再発性・慢性膀胱炎の場合は尿路(腎臓・尿管・膀胱・尿道)内の結石の有無を調べます。

 


治療

急性の細菌性膀胱炎の場合は、抗生物質(抗菌薬)の内服によって治療を行います。通常は2週間程度、内服を継続し、症状が治まり膀胱から細菌がいなくなれば治療は終了です。細菌がいなくなったかどうかは、再度尿検査をして確認します。

慢性膀胱炎の場合は、抗生物質が効きにくい耐性菌が感染していることもあるため、尿を検査センターに送り、細菌培養検査および薬剤感受性試験(原因菌の特定と、有効な抗生物質を調べる検査)を行ったうえで、適切な抗生物質を選択することが望まれます。治療期間も、急性膀胱炎に比べ、長期間の治療が必要となることがあります。

すでに膀胱結石が存在し慢性膀胱炎を起こしている場合は、手術により膀胱内の石を摘出しなければ膀胱炎がすっきり治ることはありません。抗生物質等の治療により一時的に症状が軽減しても、またすぐに再発を繰り返します。

糖尿病、慢性腎臓病といった基礎疾患が存在する場合は、それらの治療を同時に行うことで慢性膀胱炎もより短期間での改善が期待できます。

 

 

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