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⑪横隔膜ヘルニア

2018年12月|Dr.オリ~ブのなるほど診療室

横隔膜ヘルニアとは、胸とおなかを仕切っている横隔膜が事故などの何らかの原因によって破れ、その結果、おなかの中にあるべき臓器が横隔膜の破れた穴をくぐって胸の中に飛び出してしまう病気のことです 😯  

まれに先天性、つまり生まれつきのこともありますが、多くの場合は、交通事故などの強い力が腹部などに加わりその圧によって横隔膜が破れる、外傷性横隔膜ヘルニアが一般的です

経験的には、外に出入りする猫ちゃんに多く発生しています。

横隔膜ヘルニアを起こした場合、おなかの中の肝臓や腸などの臓器が胸の中に入ってしまい、心臓や肺を圧迫して呼吸困難を起こします。

呼吸したくても肺がふくらめないので、とってもとってもくるしい状態が24時間、毎日毎日続きます

外科手術によって、胸の中に脱出した臓器をおなかの中に戻し、横隔膜の破れた穴を縫合してふさがない限り、苦しい状態が治ることは生涯ありません。

しかし手術も呼吸管理が難しく麻酔はとてもハイリスクなため、命がけの手術となります…。

 

当院にご来院された横隔膜ヘルニアの症例をご紹介します。

まだ生後3カ月の子猫で、聴診をしたところ心臓の位置がおかしく呼吸困難を起こしていたので、レントゲンを撮ったところ、小腸の大部分が胸腔内に入り込んでしまっていました。

2日ほど酸素室で呼吸の安定化を図ったのち、手術を行いました。

麻酔導入後は呼吸状態がなかなか安定せず、緊迫した状態が続きましたが、上腹部を切開・開腹したところ、横隔膜の右側寄りにヘルニア孔(破れた穴)が確認できました。

 

 MVI_0191_Moment(2)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小腸の大部分がヘルニア孔を通って胸の中に入り込んでしまっていました。

↓小腸を整復している様子です。(※再生の際、苦手な方はご注意ください。)

 

小腸を慎重に引っ張り出し、胸の中の圧迫が解除され、肺がふくらめるようになり、ようやく麻酔も安定してきました。

胸の中に入ってしまった空気を抜くためのカテーテルを設置し、ヘルニア孔を糸で縫合・閉鎖し、閉腹して終了です。

MVI_0191_Moment(4)

 

 

 

 

 

 

 

 

↑ヘルニア孔に糸をかけ終わり、これから順にしばっていくところ

 

術後、この猫ちゃんも劇的に呼吸状態が改善し、元気になって退院していきました

あんなに呼吸がつらそうだっただけに、呼吸が楽になって本当に良かった!

退院おめでとう

 

⑩猫の乳腺腫瘍

2018年07月|Dr.オリ~ブのなるほど診療室

【猫の乳腺腫瘍の特徴】

 猫の乳腺腫瘍は約90%が悪性で、犬と比べて非常に予後が悪く、診断時にリンパ節や肺へ転移していることも少なくなく、根治の難しい悪性腫瘍です。発見から死亡までの期間は平均で10~12か月といわれます。

 

【性別と年齢】

高齢(平均10~12歳)のメスに多く発生します。まれにオスに発生することもあります。

 

 【臨床ステージ分類と予後の予測】

猫の乳腺腫瘍では、予後を予測するのにステージ分類がとても重要となります。そこで用いられるのが、世界保健機関(WHO)で定められているTNM分類と、それに基づく臨床ステージ分類です。

  T:腫瘍のひろがり

  N:リンパ節への浸潤状態

  M:遠隔転移の状態

 

<TNM分類>      <臨床ステージ分類>

TNM分類

臨床ステージ分類

 

 

 

 

 

 

 

まとめると、

ステージⅠ:リンパ節転移がなく、腫瘍直径が2cm未満の場合

ステージⅡ:リンパ節転移がなく、腫瘍直径が2~3cmの場合

ステージⅢ:腫瘍直径が3cm未満でも、リンパ節転移が認められた場合

      リンパ節転移の有無に関わらず直径3cmを超えている場合

ステージⅣ:遠隔転移が認められた場合

となります。

 

そして、このステージ分類による予後に関するある報告では、

 

<臨床ステージによる予後予測> 

ステージ分類と予後予測

 

 

 

 

 

 という結果が得られています。

また、腫瘍サイズと生存期間の相関性が確認されており、特に腫瘍直径が3cmを超えてしまっているかどうかが重要となります。

3cmを超えた時点で転移がなかったとしてもステージⅢとなってしまい、根治の確率が低くなってきます。

肺転移などを起こしステージⅣに移行してしまっている場合は、余命は約1カ月となってしまいます。

 

<避妊手術の乳腺腫瘍に対する予防効果>

避妊手術実施時期と予防効果2

 

 

 

 

 

1歳未満での避妊手術による乳がん発症予防効果は約90%とかなり有効です。

大人になるにつれて徐々に予防効果は下がり、2歳を超えると予防効果はほとんどありません

そのため乳腺腫瘍の発生リスクを下げるためには、早期、特に1歳未満での避妊手術を強くおすすめします。

 

【治療】

①外科治療

 猫の乳腺腫瘍に対する治療の第一選択は外科手術です。犬では腫瘍の完全切除が可能ならば部分的な乳腺切除術も考慮されますが、猫では通常、領域リンパ節の切除を含めた片側乳腺の全摘出術が選択されます。両側の乳腺に腫瘍がある場合は片方の乳腺の全摘出術を行った1ヶ月後にもう片方の乳腺全摘出術を行います。(一度にやると術後の皮膚の張りがきつく呼吸困難を起こすため)

また、ステージⅢ以上で根治が難しい場合でも、腫瘍が自壊を起こしてにおいや出血、膿などが出ているときは、転移状況を考慮しつつ緩和的治療としてQOL(生活の質)改善のために腫瘍の部分切除を行う場合もあります。

 

<片側乳腺全摘出術の目的>

片側乳腺全摘出術の一番の目的はあくまで根治をねらうことです。根治的な手術による乳腺の除去は、病変の速やかな除去と、将来的な発生リスクの減少を期待できます。ステージが低いほど、根治の可能性が高くなります。

また、報告により差はあるものの、根治的な手術により無病生存期間や、生存期間の延長が期待できます

腫瘍だけをくり抜いて切除しても腫瘍細胞の取り残しが出る可能性が高く、根治をねらう手術の場合は、片側(あるいは両側)乳腺全摘出術と領域リンパ節の切除が原則となります。

 

<術後の再発率は少なくない… >

実際には、片側乳腺全摘出術を行っても再発することは少なくなく、遠隔転移性の高さも含めると、多くの猫乳腺癌に対しては外科手術単独での根治は難しいといわれています。局所に再発が認められなくても、術後、肺やリンパ節などに遠隔転移が出てくることもあります。

局所に再発が認められた場合、原則的に再手術が推奨されますが、そのときの猫の全身状態や余命を考慮し、本当に再手術が第一選択なのか、飼い主様の希望と合わせて相談しながらその後の治療方針を決めていきます。

 

<避妊手術の同時実施>

避妊手術を同時に実施することで、術後の再発率を低下させたり、生存期間を延ばしたりという報告はありません。性ホルモンとの関連性がある腫瘍なので少し前までは乳腺切除と同時の避妊手術が一般的でしたが、前述した通り2歳を越えてからの避妊手術は乳腺腫瘍の発症を抑える効果はなく、乳腺腫瘍を発症している時点で余命もある程度限られていますし、麻酔時間も延びてしまうため、最近では同時の避妊手術をしない傾向もあります。

 

②化学療法(抗がん剤治療)

ステージⅢ以上、つまり腫瘍直径が3cmを超えている場合や、リンパ節や肺に転移が認められた場合、または術後の病理組織学的検査で悪性度が高かった場合は、外科手術後に補助的化学療法が推奨されます。

 ある報告では、ステージⅢの乳腺腫瘍の猫のグループにおいて、外科手術単独の生存期間中央値が180日であったのに対し、術後にドキソルビシンを投与した群では生存期間中央値が416日であったという報告もあります。

 ドキソルビシンは、基本的には3週間ごとに血管内に投与していきます。

 全く副作用がないわけではありませんし、必ずしも効果が認められるとは限りませんが、術後に化学療法を行うことで生存期間が延び、ステージⅢの猫でも1年以上生きられる可能性もあります。

 

⑨「吐く」

2018年06月|Dr.オリ~ブのなるほど診療室

「吐く」

今回は「吐く」という症状についてくわしくお話します。

吐くという症状は、消化器の病気や全身の様々な異常によって起こります。

犬・猫では日常的によくみられる症状で、飼い主様も気になっている症状だと思います。

「吐く」という症状は大きく、「吐出」と「嘔吐」の二つに分けられます。

 

「吐出(としゅつ)」

飲み込んだ食べ物が胃の中に入る前に口から勢いよく吐き出されることを吐出といいます。

食べた直後にみられることが多く、食べ物は未消化で、胃液はほとんど混じっていません。

吐物は食道を通過したままの筒状の形をしていることがよくあります。

吐出の原因

多くは食道の様々な機能障害、炎症、異物などによって起こります。

小型犬種では、鋭利に割れた硬めのクッキー、果物やお肉、おやつなどでも、大きさによっては丸呑みすると食道につまったり食道を傷つけ、食道閉塞や食道炎を引き起こし、激しい吐出や飲食ができないことにより、最終的に腎不全や食道狭窄、誤嚥性肺炎により命に関わることもあるので注意が必要です。

 

「嘔吐(おうと)」

胃に入った内容物を口から吐き出すことを嘔吐といいます。

吐く前に、元気消失、震え、口をなめ回したり、よだれを垂らすなどの吐き気の前兆がよくみられます。

また、吐くときに腹部の筋肉が収縮し、おなかを上下させるように胃から内容物を逆流させる蠕動(ぜんどう)運動がみられることが多いです。

●嘔吐の原因

 食道や胃腸の閉塞・圧迫、炎症、異物誤飲、腫瘍、空腹時胃酸過多、細菌・ウイルス・寄生虫などによる全身性感染症、毛球症など様々な原因が考えられます。

 

猫の毛球症

猫は毛の生えかわる換毛期に頻繁にグルーミングをし、大量の毛を飲み込み、胃の中で毛玉となり、それが胃の出口につまると胃の内容物と一緒に毛玉を吐くことがよくありますが、これは病気ではありません。

ブラッシングをこまめにしてあげたり、毛玉を便に出しやすくするサプリメントもありますので、気になっている方はお気軽にご相談下さい。

 

胃運動障害(胃アトニー)

胃の運動性低下による胃内容物の十二指腸への排出遅延のことをいいます。

簡単にいうと、胃から腸へと食べ物を送る能力が低下しているということです。

異物などによる物理的閉塞がないにも関わらず、食後数時間以上経過してから食べたものを嘔吐する場合、胃運動障害(胃アトニー)の可能性もあります。

勢いよく食べてから三十分以内に吐くこともよくあり、個人的には猫で多くみられる印象があります。

胃薬や消化管機能改善薬などの投薬や食事療法により、症状が改善することが多いです。

 

吐出、嘔吐を起こす原因リスト(多い順)

普段、僕が診療していて吐出、嘔吐の原因リストとしてみかけることの多い順に並べてみました。下の方に行くほどまれです。犬・猫共通です。

 

「吐出」の原因リスト(多い順)

 一気食いによる食道容積オーバーによる吐出

 食道内異物(超小型犬では食べ物による閉塞も含む)

 食道炎

 食道拡張症(巨大食道症)

 食道狭窄

 誤嚥性肺炎

 食道裂孔ヘルニア

 胃の噴門(胃の入り口)狭窄

 先天性右大動脈弓遺残症

 

「嘔吐」の原因リスト(多い順)

 空腹時胃酸過多

 胃潰瘍

 毛球症(猫)

 乗り物酔い

 急性・慢性胃炎

 胃運動障害・胃アトニー(特に猫)

 食物不耐性

 胆管炎(猫)

 急性膵炎

 尿路閉塞による急性腎不全(特にオス猫、オス犬)

 胆嚢炎・胆嚢破裂、胆管閉塞

 中毒

 異物による消化管閉塞(腸閉塞)

 消化管内寄生虫(特に子犬、子猫、野良猫)

 炎症性腸疾患

 糖尿病性ケトアシドーシス

 高齢犬の突発性眼振(目まい)による悪心

 腫瘍(中高齢での胃・小腸のがん、ダックスではまれに若齢でも発生)

 腸重積

 猫の巨大結腸症、便秘

 アジソン病(副腎皮質機能低下症)

 肝疾患

 肥満細胞腫(皮膚発生例でも、腫瘍随伴症候群による高ヒスタミン血症により嘔吐)

 胃の幽門(胃の出口)狭窄

 敗血症(全身性細菌感染症)

 腎炎

 パルボウイルス感染症

 レプトスピラ感染症

 その他

 

⑧膀胱の移行上皮癌

2018年01月|Dr.オリ~ブのなるほど診療室

膀胱の移行上皮癌は犬の膀胱内に発生する悪性腫瘍の中で最も発生の多い腫瘍です。

膀胱三角部(尿管が膀胱に開口する付近)での発生が多く,膀胱粘膜における乳頭状病変または膀胱壁の肥厚としてみられます。多くの症例でリンパ節や骨、肺などに転移する悪性腫瘍です。また腫瘍が尿管や尿道などに浸潤し尿路を塞ぐことで排尿困難や腎不全といった重篤な症状を引き起こし,死亡する原因となります。

 

【症状・診断】

初期の症状は、頻尿・血尿・しぶり・不適切な排尿などであり,膀胱炎や膀胱結石の症状と非常によく似ています。抗生物質などの治療に反応が悪い場合は、膀胱腫瘍の可能性も含めて、超音波検査を行います。

 

・超音波検査

膀胱内に腫瘤病変を認めても必ずしも全てが移行上皮癌とは限りません。慢性膀胱炎による粘膜肥厚や,乳頭腫,平滑筋腫などの良性腫瘍の場合もあります。これらの良性病変と移行上皮癌は画像検査のみでは鑑別できないため,膀胱に腫瘤(しこり)を見つけた場合は以下に挙げるさらなる検査が必要となります。

 

・細胞診

一般的に細胞診というと注射針を刺してサンプルを採取する針生検を行うことが多いですが、膀胱移行上皮癌の場合、針生検を行うとその針が通った穴に沿って腫瘍細胞が播種する危険性があり、膀胱腫瘍を疑う場合は針生検は禁忌となります。通常、尿道からカテーテルを膀胱内に挿入し、超音波で画像を見ながらカテーテル先端を病変部に誘導し、吸引をかけて腫瘍の一部を採取します。サンプルがうまく採取できない場合は、何度か同じ検査をするか、膀胱鏡を用いて直視下でサンプルを採取します。

細胞診により異型性の強い移行上皮細胞が認められれば移行上皮癌を強く疑うことができますが,中には異型性に乏しい移行上皮癌も存在するため,画像検査と細胞診だけでは確定診断とならないこともよくあります。

 

・BRAF遺伝子(ビーラフ遺伝子)検査

2015年に犬の移行上皮癌と前立腺癌に特異的な遺伝子変異が報告されました。尿に含まれる移行上皮細胞の遺伝子変異を検出する検査で,高い感度と特異度を持った検査です。簡単に言うと、移行上皮癌や前立腺癌かどうかを確認する検査です。細胞診だけでは確定診断がつかない場合に、補助検査としてとても有意義な検査です。採取した尿の沈渣により検査します。

BRAF遺伝子の変異が陽性の場合、ほぼ100%の確率で悪性腫瘍(膀胱腫瘍では移行上皮癌、前立腺腫瘍では前立腺癌)であると考えられます。陰性の場合も、BRAF遺伝子変異を持たないものが20~30%ほど存在するため、悪性腫瘍を否定はできず、細胞診検査と併せての判断が必要となります。

 

【治療】

一般的にがんに対する三大治療と言えば外科手術,放射線治療,抗がん剤治療ですが、膀胱移行上皮癌の場合、完全切除の難しい膀胱三角部での発生が多いことと、仮に完全切除できたとしてもその局所浸潤性の強さと遠隔転移率の高さから再発・転移を起こすことがあることから、いずれにしても抗がん剤治療が必要となります。

膀胱移行上皮癌に対しては、様々な抗がん剤プロトコールが研究され、今まではシスプラチンやミトキサントロンという抗がん剤を使うプロトコールが一般的でしたが、最近の報告では、2週間に一度のビンブラスチンの静脈内投与とピロキシカム(抗炎症剤)の内服の併用による治療が、前者の抗がん剤を用いた成績とほぼ同様の結果が得られており、副作用も少ないため主流になりつつあり、当院でもこのビンブラスチンとピロキシカムの併用による抗がん剤治療を第一選択としています。

抗がん剤による副作用としては、骨髄抑制、消化器症状(嘔吐・下痢)、脱毛(まれ)が一般的ですが、人の医療で行っている抗がん剤治療の副作用のイメージほど強烈ではないことがほとんどです。

ビンブラスチンの副作用としては、主に骨髄抑制が生じます。ビンブラスチン投与後およそ1週間後に出ることがほとんどです。血液中の赤血球、白血球、血小板のうち、最も寿命の短い白血球(好中球)が最も影響を受けやすく、好中球数が減少している時期は体内に侵入する病原体に対する抵抗力が落ちます。好中球数が少ない場合、予防的な抗生物質の経口投与などにより通常は大きな問題になることは少ないですが、この時期に嘔吐・下痢などの消化器症状や発熱が同時に起こると、正常な腸粘膜バリアの破壊によって腸内細菌の侵入に対する生体防御能が低下しているため、敗血症の発症に注意が必要となります。しかし、ビンブラスチンでは嘔吐・下痢などの消化器症状が出ることは比較的少ないです。抗がん剤投与期間中は好中球数を常にモニターする必要があり、特に抗がん剤投与1週間後の血液検査は必須となります。

ピロキシカムは長期使用により腎障害や、その効果に耐性が起こることがあり、最近では初期のみビンブラスチンとピロキシカムを併用し、腫瘍が縮小し、症状が落ち着いたら一旦ビンブラスチンのみによる単独治療に切り替え、効果が落ちてきたら再度ピロキシカムを再開するという使い方も提案されています。

最近の報告では,ビンブラスチン単独であれば,奏功率は23%,無進行期間中央値は143日,生存期間中央値は407日でした。

ビンブラスチンとピロキシカムを併用した治療では,奏功率は58%,無進行期間中央値は199日,生存期間中央値は299日でした。

 

また、膀胱三角部に腫瘍が発生している場合、膀胱全摘出術を行うこともありますが、生存期間中央値は141~385日と報告されており、前述の抗がん剤治療と比べてすごく成績が良いというわけではなく、膀胱全摘出まで行っても再発・転移を起こすこともあります。それに膀胱がなくなってしまえば尿をためておくことができないので、基本的には尿がたれ流しの状態になります。手術を行う唯一のメリットとしては、ステージの進行度によっては膀胱全摘出により根治(腫瘍の完全なる根絶)の可能性があるということです。しかし、いずれにしても術後の尿のたれ流しによる衛生管理を生涯行う必要があり、抗がん剤治療でも手術と同等の生存期間が得られているため、手術は決して第一選択の治療とはいえません。

しかし、最終的に抗がん剤治療でも腫瘍が制御できなくなった場合、最も問題となるのが排尿困難です。特に、尿管が開口する膀胱三角という場所に腫瘍が発生している場合、尿路閉塞により腎不全を起こし致命的となります。その場合、命をつなぎとめるために緊急的に尿路変更などの救済的手術を行うことはあります。

⑦「がん」ってそもそも何?

2018年01月|Dr.オリ~ブのなるほど診療室

 動物達も高齢化の時代となった今、最も多い死因が「がん(=腫瘍)」です。

 がんとは、自分の体内に存在する細胞が自律的に無目的にかつ過剰に増殖する状態と定義されます。簡単にいうと、体内のある一群の細胞が、ある特定の部位でむやみやたらと増え、転移を起こし、その動物の命をむしばむということです。

 がんは大きく二つに分けられ、リンパ腫や肥満細胞腫など自ら独立して機能できる細胞の腫瘍を独立細胞腫瘍、それ以外のものを固形がんと呼びます。固形がんはさらに分類され、上皮系細胞由来のものを「~癌」といい(例:扁平上皮癌)、 非上皮系細胞由来のものを「~肉腫」といいます(例:血管肉腫)。対して、良性のものは「~腫」といいます(例:脂肪腫)。

 腫瘍が発見に至る約1cmほどの大きさになる頃、そのしこり内にはおよそ一億~十億個のがん細胞が存在するといわれています。腫瘍の増殖曲線はS字状曲線を描くといわれ、まだ腫瘍が小さいうちは、その増殖スピードは速く急激な増殖曲線を描きますが、ある程度の大きさになるとその増殖スピードは緩やかとなります。

 人間同様、三大抗がん治療は、外科治療、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)となります。

 外科治療と放射線治療は局所のみの治療となりますが、まだ腫瘍が小さい初期のうちは根治がねらえます。腫瘍が転移を起こしてしまった場合は、局所のみの治療では対抗できないため化学療法が適応となります。ただし、リンパ腫の場合、造血器、いわゆる血液のがんで全身疾患ということになり、最初から化学療法が適応となります。

 腫瘍にはステージ分類があり、初期は局所に限局するのみ、徐々に周囲組織やリンパ節へ浸潤し、やがて他の離れた臓器(腹腔内臓器や肺、骨髄など)へ遠隔転移を起こすようになります。当然、ステージが進行すれば、根治(腫瘍の根絶)の可能性は低くなります。

 当院では腫瘍の治療にも力を入れ、外科治療、化学療法にも幅広く対応しておりますので、お悩みの方はお気軽にご相談下さい。

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